ECサイトのスマホ改善方法は？見やすいサイトのポイント

スマートフォンからのEC利用者が急増する中、モバイル最適化は必須の時代に。

本記事では、ECサイトのスマホ対応における具体的な改善方法から、コンバージョン率向上のための実践的施策まで、現場で使える知識を包括的に解説します。

モバイルECの現状と成長背景

スマートフォン普及率の急激な拡大

総務省の令和5年通信利用動向調査によると、世帯におけるスマートフォンの保有率は90.6%に達し、インターネット利用率も72.9%と、パソコンやタブレットを大きく上回っています。

項目	割合
スマートフォン保有率	90.6%
インターネット利用率	72.9%

この数字が示すのは、もはやスマートフォンが「便利なツール」ではなく「生活インフラ」になったということです。特に若い世代では、パソコンよりもスマホの方が使い慣れているという現象も見られますね。

モバイルコマース市場の急成長

経済産業省が発表した「令和4年度電子商取引に関する市場調査」では、2022年の物販系BtoC-EC市場規模は13兆9997億円で、そのうちスマホ経由が7兆8375億円と、実に55.98%を占めています。

注目すべき数字

• 物販系EC市場：13兆9997億円
• スマホ経由：7兆8375億円（55.98%）
• 年々増加傾向にあるモバイル比率

つまり、ECサイトの売上の半分以上がスマホ経由ということになります。この傾向はコロナ禍を経てさらに加速しており、スマホEC対応は「やった方がいい」から「やらないと生き残れない」レベルまで重要度が高まっているんです。

モバイルショッピングの進化

単なるサイズ縮小版ではなく、モバイルアプリとSNSの連携、AIを活用したパーソナライゼーション、AR/VR技術の導入など、スマホならではの新しいショッピング体験が次々と生まれています。今後はこれらの技術を取り入れた差別化も重要になってくるでしょう。

モバイルフレンドリーなECサイトの必要性

モバイルフレンドリーとは何か

モバイルフレンドリーなECサイトとは、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末で問題なくスムーズに動作するウェブサイトのことです。単に画面サイズに合わせて表示されるだけでなく、以下の要素が最適化されている必要があります。

技術面での最適化

• 小さな画面での見やすさ
• タッチ操作への対応
• 高速な読み込み速度
• 直感的なナビゲーション

UX面での最適化

• 使いやすい入力フォーム
• 簡潔な決済プロセス
• 分かりやすい商品表示
• エラーの分かりやすい表示

要するに、「PCサイトをそのまま小さくしただけ」ではダメで、スマホユーザーの行動パターンや使用環境を考慮した設計が必要なんですね。

SEO観点からの重要性

モバイルファーストインデックス

Googleは2018年より「モバイルファーストインデックス（MFI）」を導入し、検索結果の順位付けをスマートフォン向けページをベースに行うようになりました。

• PC版のみ：検索順位大幅下落のリスク
• 不完全なスマホ対応：評価低下の要因
• 適切なモバイル対応：SEO評価向上

つまり、SEOの観点からも「スマホ対応は必須」という状況になっています。検索で見つけてもらえなければ、どんなに良い商品を扱っていても売上につながりませんからね。

重要：モバイルフレンドリーでないサイトは、検索結果で不利になるだけでなく、ユーザーの離脱率も高くなる傾向があります。

レスポンシブデザインとモバイル専用サイトの比較

モバイル対応には大きく分けて2つのアプローチがあります。それぞれの特徴を理解して、自社に最適な方法を選択することが重要です。

レスポンシブデザイン

1つのHTMLで複数のデバイスに自動対応する設計手法

メリット

• URLが統一されシェアしやすい
• 制作・運用コストが抑えられる
• SEO効果が期待できる
• 更新・メンテナンスが楽

デメリット

• 表示速度が遅くなる可能性
• デザインに制約がある
• 初期費用が高額になりやすい
• 後からの変更が困難

モバイル専用サイト

PC版とは別にモバイル専用のサイトを構築する手法

メリット

• 表示速度の向上
• デザインの自由度が高い
• モバイル特化のUXを提供
• 細かい最適化が可能

デメリット

• 制作・運用コストが高い
• 2つのサイトの管理が必要
• URLが分かれる
• SEO対策が複雑

どちらを選ぶべきか？

レスポンシブデザインが向いている場合：

予算を抑えたい、運用リソースが限られている、シンプルなECサイトを運営している

モバイル専用サイトが向いている場合：

スマホ経由の売上が圧倒的に多い、ブランディングを重視したい、予算に余裕がある

モバイルECのコンバージョン率向上施策

決済手段の多様化

モバイルECにおける「カゴ落ち」の主要因の一つが、決済手段の少なさです。クレジットカード情報の入力が面倒で購入を諦めるユーザーは想像以上に多いんですね。

モバイル決済

• PayPay
• LINE Pay
• メルペイ
• Apple Pay
• Google Pay

コンビニ決済

• セブンイレブン
• ローソン
• ファミリーマート
• 払込票決済
• 番号決済

キャリア決済

• ドコモ払い
• auかんたん決済
• ソフトバンクまとめて支払い
• 楽天モバイル決済

その他の決済手段

代金引換（代引き）：

商品到着時に支払い。オンライン決済に不安があるユーザーに人気

後払い決済：

商品確認後に支払い。女性や高齢者に人気の決済方法

銀行振込：

従来からある決済方法。年配の方に馴染みがある

電子マネー：

Suica、nanaco等。日常的に使っているユーザーが多い

チェックアウトプロセスの最適化

決済手段を増やすだけでなく、決済プロセス自体の最適化も重要です。理想は「1ページチェックアウト」で、購入ステップを可能な限り短縮することです。

入力項目の最小化

必要最小限の情報のみを入力してもらう。後から追加できる情報は購入完了後に収集

自動入力機能の活用

郵便番号から住所自動入力、ブラウザの記憶機能活用など

エラー表示の改善

リアルタイムエラー表示、分かりやすいエラーメッセージ

進捗表示

「あと何ステップで完了」が分かるプログレスバー

EFO対策による入力フォーム最適化

入力フォームの離脱率は約70％

入力完了するユーザーはたったの30％という現実

EFO（Entry Form Optimization）とは、入力フォームを最適化してコンバージョンにつなげる施策のことです。特にスマホでは画面が小さく入力が一苦労なので、ストレスを感じないフォーム設計が不可欠です。

スマホEFO対策の10のポイント

1. 入力項目数を最小限に

項目が多いとユーザーの入力意欲が減少。購入に必要な情報だけに絞り込む

2. 文字サイズは14px以上

小さすぎると視認性が落ち、高齢者には特に大きな負担。18pxまで上げると効果的

3. 入力欄サイズの最適化

横幅320-330px、高さ50-60pxが推奨。誤タップや入力しづらさを防ぐ

4. リアルタイムエラー表示

入力内容をその場でチェック。送信後のエラーでがっかりさせない

5. プレースホルダーの活用

入力例を事前表示。ただしラベルの置き換えには使わない

6. 生年月日はロール形式

ドロップダウンメニューで手間を削減。年代の初期設定も重要

7. メール・パスワードは1つの入力欄

確認用の重複入力はストレス。表示/非表示切り替え機能で対応

8. 1カラムレイアウト採用

縦方向配置で入力欄を大きく確保。自動ズーム問題も回避

9. キーボード自動切り替え

電話番号なら数字キーボード、メールならアルファベットに自動切り替え

10. プログレスバー表示

残りの入力項目数が分かれば、ユーザーの完了意欲が維持される

EFOツールの活用

「一画面一項目」形式のEFOツールを使用することで、フォームが長く見えるのを防ぎ、入力へのストレスを大幅に軽減できます。既に最適化されたフォームでも、さらに123%の改善効果が報告されています。

改善効果：61%のユーザーが「ページの長さ、項目数の多さ」で離脱すると回答。EFOツール導入により、この問題を根本的に解決可能

スマホデザインで重要な8つのポイント

スマホユーザーの50%以上が片手でデバイスを操作するという調査結果があります。この事実を踏まえたデザイン設計が、コンバージョン率向上の鍵となります。

ファーストビューは1つの情報に集約

多くの情報を詰め込まず、ユーザーが「続きを見たい」と思うレベルの情報量に留める。ECサイトは流し読みされることが多いため、第一印象で離脱されないよう画像や動画を効果的に配置することが重要です。

実践ポイント：メインビジュアルは1つの商品やメッセージに絞り、思わずスクロールしたくなる「続きがありそう」な印象を演出

優先順位の高い情報を上部に配置

スマホでは1画面で提供できる情報に限界があるため、掲載情報に優先順位をつけ、ニーズの高い商品や推奨商品を上部に配置。下部に行くほど情報は読まれなくなります。

実践ポイント：売れ筋商品、新商品、セール商品の順で配置。アクセス解析データを活用して優先順位を決定

カテゴリの分かりやすさ

PCのようにヘッダーに並べるとごちゃごちゃして見えるため、ハンバーガーメニューでまとめるなど、サイト内回遊しやすい工夫が必要。カテゴリが多い場合は階層構造も重要です。

実践ポイント：ハンバーガーメニューには「メニュー」より「カテゴリ」「商品一覧」など分かりやすいラベルを使用

商品情報の見やすさ

商品画像は4列程度が限界。それ以上は写真が小さすぎて商品情報を見つけられない。多数の商品を表示したい場合はスライド機能を活用し、列数は少なく保つことが重要です。

実践ポイント：商品画像は高解像度で、ズーム機能も提供。商品名は2行以内、価格は分かりやすく強調表示

シンプルな動作設計

画面が小さく誤操作しやすいため、細かい動作は避けてシンプルな操作を採用。Googleの検索もスマホ版ではページ遷移せずに閲覧できるデザインになっているのが参考になります。

実践ポイント：ページネーションより無限スクロール、複雑なドロップダウンより大きなタップエリア

項目の多いコンテンツはコンパクトに

Q&Aなど項目数が多いコンテンツは、アコーディオン機能でコンパクトに収納。一度に全て表示すると読む気が失せてしまうため、必要な情報だけを開いて確認できる設計が効果的です。

実践ポイント：FAQ、商品詳細、配送情報など、長文コンテンツは必ずアコーディオン化

電話機能の活用

スマホ特有の通話機能を活かし、1タップで電話できる設定でコンバージョン率アップが期待できます。ユーザーの利便性や安心感も高まるため、問い合わせ対応体制があれば積極的に活用しましょう。

実践ポイント：営業時間を明記し、つながりやすい時間帯をアピール。チャットボットと併用すると効果的

親指操作を前提とした設計

片手持ちで親指操作するユーザーが多いため、重要なボタンは親指で押しやすい位置に配置。画面下部の中央付近が最もアクセスしやすいエリアです。

実践ポイント：購入ボタン、カートボタンは画面下部に固定表示。ボタンサイズは最低44px×44px確保

レスポンシブデザインの限界

ECサイトでは、レスポンシブデザインよりもスマホ専用デザインの方が効果的です。なぜなら、複雑な商品情報や多彩な機能を持つECサイトでは、PCとスマホで求められるユーザー体験が大きく異なるからです。ブランディングやオリジナリティを重視するなら、専用デザインを検討することをお勧めします。

成功事例から学ぶベストプラクティス

優秀なスマホECサイトの共通点

デザイン面

• ブランドイメージの一貫性
• シンプルで直感的なナビゲーション
• 商品画像の高品質表示
• カテゴリの整理整頓
• 読み込み速度の最適化

機能面

• 検索機能の充実
• フィルタリング機能
• ワンクリック決済
• カート機能の最適化
• 個人情報管理の透明性

業界別の特徴的な施策

ファッション・アパレル

商品画像を大きく表示し、複数角度からの写真を提供。コーディネート提案機能やサイズ表の分かりやすい表示が重要。

成功例：UNIQLO、ZOZOTOWN、UNITED ARROWS

雑貨・ライフスタイル

ブランドの世界観を重視し、使用シーンが想像できる画像を多用。北欧系ブランドでは、シンプルで清潔感のあるデザインが効果的。

成功例：北欧、暮らしの道具店、無印良品

家電・ガジェット

商品の機能性を分かりやすく説明し、比較機能やスペック表示を充実。レビュー機能も重要な要素。

成功例：ヨドバシカメラ、ビックカメラ

食品・グルメ

商品の美味しそうな写真と、産地や製造工程の情報を分かりやすく表示。賞味期限や配送方法の説明も重要。

成功例：楽天市場の人気ショップ、産直系ECサイト

成功の秘訣

ユーザー目線

自社の都合ではなく、お客様の使いやすさを最優先に設計

継続的改善

データ分析に基づく継続的な改善とA/Bテストの実施

技術投資

最新のモバイル技術への対応と表示速度の最適化

実装のためのアクションプラン

段階別実装ロードマップ

現状分析・問題点の洗い出し【1-2週間】

実施項目

• Google Analyticsでモバイル流入・コンバージョン率を確認
• PageSpeed Insightsでモバイル表示速度を測定
• 実際にスマホで自社サイトを操作してみる
• 競合他社のスマホサイトを調査
• 社内でのユーザビリティテスト実施

目標：改善すべき優先順位を明確化し、予算と工期を算定

緊急度の高い改善から着手【2-4週間】

実施項目

• 表示速度の改善（画像圧縮、CDN導入など）
• 基本的なレスポンシブ対応
• フォントサイズ・ボタンサイズの最適化
• 電話番号リンクの設置
• 明らかなUIの問題修正

目標：基本的なユーザビリティを確保し、離脱率を改善

EFO対策と決済系の改善【3-6週間】

実施項目

• 入力フォームの項目数削減・最適化
• リアルタイムエラー表示の実装
• モバイル決済（PayPay、LINE Payなど）の導入
• 1ページチェックアウトの実装
• プログレスバーの設置

目標：コンバージョン率を20-30%改善

高度な最適化・差別化施策【2-3ヶ月】

実施項目

• PWA（Progressive Web App）対応
• AIを活用した商品レコメンド機能
• チャットボット・問い合わせ機能の充実
• ソーシャルログインの導入
• AR機能やバーチャル試着機能

目標：競合他社との差別化と顧客ロイヤリティ向上

必要なツール・リソース

分析ツール

• Google Analytics（必須）
• Google Search Console
• PageSpeed Insights
• Google Mobile-Friendly Test

開発・デザインツール

• レスポンシブデザインツール
• 画像最適化ツール
• EFOツール
• A/Bテストツール

成果測定指標（KPI）

基本指標

• モバイルコンバージョン率
• モバイル離脱率
• 平均セッション時間
• ページ表示速度

応用指標

• フォーム完了率
• カート放棄率
• リピート購入率
• 顧客単価（モバイル経由）

まとめ：スマホEC改善の重要性と今後の展望

スマートフォンからのEC利用は既に市場の半数以上を占め、この傾向は今後さらに加速することが予想されます。単なる「PC版の縮小」ではなく、スマホユーザーの行動特性を理解した専用の最適化が、売上向上の鍵となります。

55.98%

モバイルEC市場比率

70%

フォーム離脱率

123%

EFO改善効果

本記事で紹介した施策は、すべて実際の現場で効果が確認されている実践的な手法です。重要なのは、段階的に実装し、継続的に改善していくことです。一度に全てを変更するのではなく、まずは基本的なユーザビリティの改善から始めて、データを見ながら最適化を進めていきましょう。

今すぐ始められるアクション

1. 自社サイトのモバイル表示速度をPageSpeed Insightsで確認
2. Google Analyticsでモバイルコンバージョン率をチェック
3. 実際にスマホで自社サイトでの購入プロセスを体験
4. 明らかな問題点（文字サイズ、ボタンサイズなど）を洗い出し
5. 改善の優先順位を決定し、実装計画を立案

スマホEC最適化は「やるかやらないか」ではなく、
「いつから始めるか」の問題です。
今日から改善を始めて、競合他社に差をつけましょう！