動画視聴の普及とともに注目を集めるインストリーム広告。
YouTubeをはじめとする動画プラットフォームで日常的に目にするこの広告形式は、企業のマーケティング戦略において重要な役割を果たしています。
本記事では、インストリーム広告の基本概念から種類、メリット・デメリット、そしてYouTubeでの出稿方法や費用まで、マーケティング担当者が知っておくべき情報を包括的に解説します。
効果的な動画広告運用を目指す方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
インストリーム広告の基本概念
インストリーム広告とは何か
インストリーム広告とは、動画コンテンツの再生前、再生中、または再生後に表示される動画広告のことです。
動画視聴者が目的の動画を見る過程で必然的に接触する広告形式であり、高い視認性と注目度を誇ります。
YouTube動画を視聴する際に流れる広告が代表例で、現在多くの動画プラットフォームで採用されている主要な広告フォーマットです。
インストリーム広告の市場規模と成長性
動画広告市場は急速な拡大を続けています。
サイバーエージェントの調査によると、2024年の国内動画広告市場規模は前年比115.9%となる7,249億円に達し、2028年には1兆1,471億円まで成長すると予測されています。
この成長の背景には、スマートフォンでの動画視聴習慣の定着と、企業のデジタルマーケティング投資の増加があります。
特にスマートフォン向け動画広告需要は5,750億円(前年比113.9%)となり、動画広告市場全体の79%を占める主要な領域となっています。
インストリーム広告の主要な種類
スキップ可能なインストリーム広告(スキッパブル広告)
スキップ可能なインストリーム広告は、再生開始から5秒経過後にユーザーがスキップを選択できる広告形式です。
主な特徴:
- 5秒間は確実に視聴してもらえる
- ユーザーの選択権があるため不快感を軽減
- 30秒以上視聴またはクリックされた場合のみ課金(CPV課金)
- 動画の長さに上限はないが、12秒~3分が推奨
この形式は興味のないユーザーに対する無駄な費用を抑えられるため、費用対効果の高い広告運用が可能です。
スキップ不可のインストリーム広告(ノンスキッパブル広告)
スキップ不可のインストリーム広告は、途中でスキップできない完全視聴型の広告です。
主な特徴:
- 15秒以内の尺で確実に最後まで視聴してもらえる
- 1,000回表示ごとに課金(CPM課金)
- 費用相場は400~600円/1,000回表示
- ブランド認知拡大に効果的
確実にメッセージを伝えられる反面、ユーザーにストレスを与えるリスクもあるため、広告内容の質が重要になります。
バンパー広告
バンパー広告は6秒以内のスキップ不可広告で、短時間でインパクトを与える広告形式です。
主な特徴:
- 6秒以内という短時間で完結
- スキップ不可だがユーザーストレスが少ない
- CPM課金(400~600円/1,000回表示)
- 記憶に残りやすいメッセージ性が重要
短い時間にメッセージを凝縮する必要があるため、クリエイティブの工夫が成功の鍵となります。
インストリーム広告の配信タイミング
プレロール広告
プレロール広告は動画コンテンツの再生前に流れる広告で、最も一般的な配信タイミングです。
動画視聴の入り口に位置するため、高い視聴率を期待できます。
ユーザーが目的の動画を見るために必ず通過する地点であり、ブランド認知拡大に最適なタイミングといえます。
ミッドロール広告
ミッドロール広告は動画コンテンツの途中に挿入される広告です。
8分以上の動画にのみ設定可能で、視聴者が動画の続きを見たいという心理を活用できるため、離脱率が低く視聴完了率が高い特徴があります。
テレビCMに近い感覚でユーザーに受け入れられやすい傾向があります。
ポストロール広告
ポストロール広告は動画コンテンツ終了後に流れる広告です。
動画視聴が完了した後のタイミングのため離脱率は高めですが、興味を持ったユーザーには最後まで視聴してもらえる可能性が高く、具体的なアクションにつなげやすい特徴があります。
インストリーム広告のメリット・デメリット
インストリーム広告の主要メリット
高い費用対効果
スキップ可能なインストリーム広告では、興味のないユーザーがスキップした場合は課金されないため、無駄な広告費を抑制できます。
実際に興味を示したユーザーにのみ費用が発生するため、効率的な予算運用が可能です。
確実な視認機会の確保
どの種類のインストリーム広告でも、最低5秒間は確実にユーザーの注目を集めることができます。
この短時間でも強いインパクトを与えることで、ブランド認知や商品理解の向上が期待できます。
豊富なターゲティング機能
年齢、性別、興味関心、地域など詳細なターゲティングが可能で、最適なユーザー層に効率的にリーチできます。
テレビCMでは困難な精密なターゲティングが、インストリーム広告の大きな強みです。
インタラクティブ機能の活用
行動促進ボタン(CTA)、商品フィード、サイトリンクなどのインタラクティブ要素を追加できるため、広告からの直接的なコンバージョンが期待できます。
インストリーム広告のデメリット
動画制作の難易度とコスト
効果的なインストリーム広告には質の高い動画コンテンツが必要で、制作には専門知識と相応のコストがかかります。
特に最初の5秒間でユーザーの興味を引く必要があるため、クリエイティブの工夫が重要です。
ユーザーの嫌悪感リスク
見たい動画の前に強制的に広告が挿入されるため、ユーザーにネガティブな印象を与える可能性があります。
適切なターゲティングと魅力的なコンテンツにより、このリスクを最小限に抑える必要があります。
YouTubeインストリーム広告の費用体系
課金方式の種類
CPV課金(Cost Per View)
スキップ可能なインストリーム広告で採用される課金方式です。
- 30秒以上視聴または広告クリック時に課金
- 費用相場:5~30円/1視聴
- スキップされた場合は課金されない
CPM課金(Cost Per Mille)
スキップ不可のインストリーム広告とバンパー広告で採用される課金方式です。
- 1,000回表示ごとに課金
- 費用相場:400~600円/1,000回表示
- 確実に広告を表示できる
2025年最新の費用相場
広告種類別費用相場:
広告種類 | 課金方式 | 費用相場 |
---|---|---|
スキップ可能インストリーム広告 | CPV | 5~30円/1視聴 |
スキップ不可インストリーム広告 | CPM | 400~600円/1,000回表示 |
バンパー広告 | CPM | 400~600円/1,000回表示 |
費用は競合状況、ターゲット設定、広告品質などにより変動するため、継続的な最適化が重要です。
予算設定の考え方
最低出稿金額の設定はないため、数千円からでも運用開始が可能です。
効果的な運用のためには、少なくとも月額10万円以上の予算確保が推奨されており、十分なデータ収集と最適化を行うことができます。
YouTubeインストリーム広告の出稿方法
事前準備
出稿前に以下の準備が必要です:
- Google広告アカウントの作成
- 広告用動画のYouTubeへのアップロード(非公開設定可)
- ランディングページの準備
- 広告予算の決定
ステップ1:キャンペーンの作成
Google広告にログインし、「新しいキャンペーンを作成」を選択します。
キャンペーンの目標を設定する画面で、「ブランド認知度とリーチ」「販売促進」など、自社の目的に応じた項目を選択しましょう。
キャンペーンタイプでは「動画」を選択し、サブタイプで具体的な広告形式を決定します。
ステップ2:予算と配信設定
予算設定項目:
- 日予算または期間予算の選択
- 入札戦略の設定(目標CPVやCPMなど)
- 配信期間の設定
- 配信地域の指定
広告審査には数日かかるため、配信開始希望日より余裕を持ったスケジュール設定が重要です。
ステップ3:ターゲティング設定
主要なターゲティングオプション:
- ユーザー属性(年齢、性別、世帯収入など)
- 興味関心(カテゴリ、アフィニティオーディエンスなど)
- 行動データ(購買意向、ライフイベントなど)
- キーワードターゲティング
- プレースメント(特定のチャンネルや動画)
精密なターゲティングにより、広告効果の最大化と無駄な費用の削減が可能です。
ステップ4:広告クリエイティブの設定
設定項目:
- 広告動画の選択
- 最終ランディングページURL
- 表示URL
- 広告見出し(15文字以内)
- 行動促進フレーズ(CTA)
- コンパニオンバナー画像
モバイル表示の確認も忘れずに行い、全デバイスで適切に表示されることを確認しましょう。
インストリーム広告の効果的な制作ポイント
最初の5秒間の重要性
インストリーム広告の成功は最初の5秒で決まります。
ユーザーの96%が広告をスキップする傾向にあるため、この短時間でいかに注意を引きつけるかが重要です。
効果的な冒頭の作り方:
- インパクトのある数字や特典を先出し
- ターゲットの課題に直接言及
- 視覚的に印象に残る映像の使用
- 明確で簡潔なメッセージ
ターゲットの明確化
動画制作前にペルソナを詳細に設定し、そのユーザーの課題や関心事に焦点を当てたメッセージを作成します。
「自分ごと」として捉えられる内容にすることで、スキップ率の低下と視聴完了率の向上が期待できます。
音声なしでも理解できる設計
多くのユーザーがミュート状態で視聴する可能性を考慮し、テロップや視覚的要素を効果的に活用します。
文字情報と映像だけでメッセージが伝わる構成にすることが重要です。
CTAの最適化
明確で魅力的な行動促進要素を設置し、視聴者を次のステップに誘導します。
「詳しくはこちら」「今すぐ申し込み」など、具体的で緊急性のあるフレーズが効果的です。
インストリーム広告の成功事例
アウディ R8の事例
ドイツの高級車メーカー「アウディ」は、新型スポーツカー「R8」のプロモーションで革新的なアプローチを実施しました。
施策内容:
- 5秒間に車の加速映像と商品名を凝縮
- 5秒経過後に「You can skip the ad now」と表示
- あえてスキップを促すことで逆に興味を喚起
この逆転の発想により、従来の広告以上にユーザーの記憶に残る効果を実現しました。
LINEマンガの事例
LINEマンガは電子コミックサービスの認知拡大を目的としたインストリーム広告で成功を収めています。
施策内容:
- マンガの一部のみを公開し続きを見たくなる構成
- 有名作品の取り扱いをアピール
- ターゲットの「続きが気になる」心理を活用
結果として、アプリインストール単価が13%改善という成果を達成しました。
インストリーム広告の効果測定と最適化
主要KPIの設定
認知拡大が目的の場合:
- インプレッション数
- リーチ数
- 視聴率
- ブランドリフト効果
コンバージョンが目的の場合:
- 視聴完了率
- クリック率(CTR)
- コンバージョン率(CVR)
- 顧客獲得単価(CPA)
効果測定のタイミング
配信開始から約2週間は最適化のためのデータ蓄積期間として、大幅な変更は避けることが推奨されます。
十分なデータが蓄積された後、以下の観点で分析を行います:
分析ポイント:
- 時間帯別の配信効果
- ターゲット属性別のパフォーマンス
- 配信面別の成果比較
- クリエイティブ別の効果差
継続的な最適化
効果測定結果を基に、以下の要素を継続的に改善していきます:
- ターゲティング設定の調整
- 入札戦略の見直し
- クリエイティブのA/Bテスト
- 配信タイミングの最適化
まとめ
インストリーム広告は動画マーケティングにおいて極めて重要な広告形式です。
高い視認性と精密なターゲティング機能により、効果的なブランド認知拡大とコンバージョン獲得が可能になります。
成功のポイントは、ターゲットユーザーのニーズを深く理解し、最初の5秒間で強いインパクトを与える質の高いクリエイティブを制作することです。
また、継続的な効果測定と最適化により、費用対効果の向上を図ることが重要になります。
動画広告市場の成長とともに、インストリーム広告の重要性はさらに高まることが予想されるため、早期からの取り組みにより競合優位性を確立できるでしょう。
適切な戦略とクリエイティブにより、インストリーム広告を自社のマーケティング成果向上につなげていきましょう。