こんにちは。LandingHubです。
今日は、多くのWeb担当者が頭を悩ませている「表示速度とSEO」について、実践的な視点から詳しくお話しします。
実際に数百のECサイトを見てきた経験から言えることは、表示速度の改善は単なる技術的な課題ではなく、ビジネス成果に直結する重要な施策だということです。
この記事では、表示速度がSEOに与える影響から、具体的な改善方法まで、網羅的にお伝えしていきますね。
目次
なぜ表示速度がSEOで重要なのか?
まず最初に、なぜ表示速度がSEOにとって重要なのかを理解しましょう。
Googleの公式見解
Googleは2018年1月に、「ページの読み込み速度をモバイル検索のランキング要素に使用する」と正式に発表しました。
これは「Speed Update」と呼ばれるアップデートで、2018年7月から本格的に実装されています。
ただし、Googleは同時にこんなことも言っています。
「ユーザーに本当に遅い体験を提供しているようなページについてのみ影響し、ごくわずかな割合のクエリにしか影響しません。」
つまり、極端に遅いページだけがペナルティを受けるということですね。でも、これで安心してはいけません。なぜなら…
ユーザー体験が最優先
SEOの順位への直接的な影響は限定的かもしれませんが、ユーザー体験への影響は甚大です。
Googleの調査によると
- ページ表示が1秒から3秒に延長されると、直帰率が32%増加
- 表示に3秒以上かかると、53%のユーザーが離脱
- 1秒から6秒に延長されると、直帰率は約2倍に
つまり、SEOで上位表示されても、表示速度が遅ければユーザーは去ってしまう。これが現実なんです。
Googleが表示速度を重視する背景
Googleが表示速度を重視するようになった背景には、いくつかの重要なアップデートがあります。
Speed Update(2018年7月)
モバイル検索において、表示速度が極端に遅いページの順位を下げるアップデートです。
影響を受けるのは本当に遅いページだけですが、これによりWebサイト運営者の意識が大きく変わりました。
モバイルファーストインデックス(2018年3月〜)
PCサイトではなく、モバイルサイトを基準にSEO評価を行うようになりました。
モバイル環境では通信速度やデバイス性能の制約があるため、表示速度の重要性がさらに高まりました。
ページエクスペリエンスアップデート(2021年6月)
Core Web Vitalsがランキング要因に正式追加されました。
これにより、表示速度を含むユーザー体験が、より直接的にSEOに影響するようになったんです。
表示速度がビジネスに与える影響
ECサイトや情報メディアなど、どんな目的のサイトだったとしても表示速度の改善が売上に直結するということです。
コンバージョン率への影響
Amazonの有名な調査では、「ページ表示が0.1秒低下すると、コンバージョンが1%減少する」という結果が出ています。
ECサイトにとって、これは売上に直接関わる重要な数字ですよね。
SEO効果への影響
- 検索順位の向上:Core Web Vitalsの改善により、同レベルのコンテンツを持つ競合より優位に
- クロール効率の向上:Googleのクローラーがスムーズにサイトを巡回
- インデックス登録の促進:新しいページが検索結果に表示されやすくなる
ユーザー行動への影響
- 滞在時間の延長:ページが快適に表示されることで、ユーザーが長く滞在
- ページビュー数の増加:サイト内の回遊が促進される
- 直帰率の改善:ユーザーがすぐに離脱することが減る
実際、弊社LandingHubでも、表示速度の改善により多くのクライアント様のコンバージョン率向上を実現しています。
表示速度の測定方法
改善するためには、まず現状を知ることが大切です。
ここでは、表示速度を測定するための主要なツールをご紹介します。
PageSpeed Insights(最も重要)
URL:https://pagespeed.web.dev/
Googleが提供する無料ツールで、最も信頼性が高い測定ツールです。
- URLを入力
- 「分析」をクリック
- モバイル・デスクトップ両方の結果を確認
スコアの目安:
- 90-100点:優秀(緑)
- 50-89点:改善が必要(黄)
- 0-49点:不良(赤)
特に重要なのは、改善できる項目の提案です。赤字で表示される項目から優先的に対処しましょう。
Google Analytics 4(GA4)
サイト全体の表示速度を継続的に監視するのに便利です。
- 左メニュー「レポート」→「エンゲージメント」→「ページとスクリーン」
- 「ページの読み込み時間」をセカンダリディメンションに追加
Google Search Console
「ウェブに関する主な指標」レポートで、Core Web Vitalsの状況を確認できます。
実際のユーザーデータに基づいているため、非常に重要な指標です。
Lighthouse(Chrome拡張機能)
より詳細な分析が可能で、開発者向けの情報も豊富に提供されます。
Core Web Vitalsとは?
Core Web Vitalsは、Googleが定義した「優れたユーザー体験」を測る3つの指標です。
2021年からSEOのランキング要因として正式採用されています。
LCP(Largest Contentful Paint)
測定内容:ページの最も大きなコンテンツが表示されるまでの時間
目標値:2.5秒以内
改善ポイント:
- 画像の最適化
- サーバー応答時間の短縮
- JavaScriptの最適化
CLS(Cumulative Layout Shift)
測定内容:ページ読み込み中のレイアウトのズレ
目標値:0.1未満
改善ポイント:
- 画像サイズの事前指定
- 広告領域の予約
- Webフォントの最適化
INP(Interaction to Next Paint)
測定内容:ユーザーの操作に対する応答時間
目標値:200ミリ秒未満
改善ポイント:
- JavaScriptの最適化
- 長いタスクの分割
- オフスクリーン画像の遅延読み込み
注意:2024年3月から、FID(First Input Delay)がINPに変更されました。
表示速度が遅くなる主な原因
ECサイトを数多く見てきた経験から、表示速度が遅くなる主な原因をお伝えします。
画像関連の問題(最も多い)
- 高解像度画像の未圧縮使用
- 不適切な画像フォーマット(PNG vs JPEG vs WebP)
- 画像サイズの未指定(width, height属性なし)
- 遅延読み込みの未実装
JavaScript・CSS関連
- 未使用コードの残存
- ファイルの未圧縮(minify未実施)
- レンダリングブロッキング要素
- 外部スクリプトの過多(Google Analytics、広告タグなど)
サーバー・インフラ関連
- サーバースペック不足
- データベースクエリの非効率
- キャッシュ設定の不備
- CDN未使用
WordPress特有の問題
- プラグインの過多
- テーマの重さ
- PHPバージョンの古さ
- データベースの肥大化
具体的な改善方法12選
ここからは、実際に効果的な改善方法を詳しく解説していきます。難易度順に並べているので、簡単なものから取り組んでみてください。
【初級編】すぐにできる改善方法
1. 画像の最適化
具体的な手順:
- 画像圧縮ツールの使用
- TinyPNG(https://tinypng.com/)
- Squoosh(https://squoosh.app/)
- 適切なフォーマット選択
- 写真:JPEG(品質80-90%)
- アイコン・ロゴ:PNG
- 次世代フォーマット:WebP
- 画像サイズの適正化
- 表示サイズに合わせてリサイズ
- 不要な部分のトリミング
2. 遅延読み込み(Lazy Loading)の実装
HTMLの画像タグにloading="lazy"
属性を追加するだけです:
<img src="image.jpg" alt="説明" loading="lazy" width="800" height="600">
3. 不要なプラグインの削除
WordPressを使用している場合、使用していないプラグインを無効化・削除しましょう。特に以下は要注意:
- 複数のSEOプラグイン
- 使用していないSNS連携プラグイン
- 古いセキュリティプラグイン
【中級編】効果的な改善方法
4. CSS・JavaScriptの最適化
minify(圧縮)の実装:
- 不要な空白・改行の削除
- コメントの削除
- 変数名の短縮
ツール例:
- CSS Minifier(https://cssminifier.com/)
- JavaScript Minifier(https://javascript-minifier.com/)
5. ブラウザキャッシュの設定
.htaccessファイルに以下のコードを追加:
# ブラウザキャッシュの設定
<IfModule mod_expires.c>
ExpiresActive on
ExpiresByType text/css "access plus 1 year"
ExpiresByType application/javascript "access plus 1 year"
ExpiresByType image/jpeg "access plus 1 year"
ExpiresByType image/png "access plus 1 year"
ExpiresByType image/webp "access plus 1 year"
</IfModule>
6. WebPフォーマットの採用
WebPは従来のJPEGより25-30%小さいファイルサイズを実現できます。
実装方法(picture要素使用):
<picture>
<source srcset="image.webp" type="image/webp">
<img src="image.jpg" alt="説明">
</picture>
【上級編】高度な改善方法
7. クリティカルCSSの実装
ファーストビューに必要なCSSのみを優先的に読み込む技術です。
8. CDN(Content Delivery Network)の導入
世界中に分散されたサーバーから、ユーザーに最も近い場所からコンテンツを配信。
おすすめCDNサービス:
- Cloudflare(無料プランあり)
- AWS CloudFront
- KeyCDN
9. HTTP/2の有効化
複数のリソースを並列で読み込み可能。多くのモダンなサーバーで対応済み。
10. プリロード・プリフェッチの実装
重要なリソースを事前に読み込み:
<link rel="preload" href="critical.css" as="style">
<link rel="preload" href="hero-image.jpg" as="image">
11. データベースの最適化
WordPressの場合:
- 不要なリビジョンの削除
- スパムコメントの清掃
- 未使用プラグインのデータ削除
- データベースの最適化プラグイン使用
12. AMP(Accelerated Mobile Pages)の実装
モバイル専用の高速化フレームワーク。特にニュースサイトやブログで効果的。
【WordPress編】特有の高速化テクニック
WordPressサイトは特有の課題があります。ECサイトでもWordPressを使用することが多いので、専用の対策をご紹介します。
おすすめプラグイン
キャッシュプラグイン
- W3 Total Cache:高機能だが設定が複雑
- WP Rocket:有料だが設定が簡単
- WP Super Cache:無料で軽量
画像最適化プラグイン
- Smush:自動で画像圧縮
- ShortPixel:WebP対応
- EWWW Image Optimizer:包括的な画像最適化
PHPバージョンの更新
PHP 8.0以降を使用することで、大幅な速度向上が期待できます。レンタルサーバーの管理画面から簡単に変更可能です。
テーマの選定
高速化に特化したテーマを選ぶことも重要:
- Astra
- GeneratePress
- Neve
上級者向け高速化テクニック
サーバーレベルでの最適化
Gzip圧縮の有効化
.htaccessファイルに追加:
# Gzip圧縮
<IfModule mod_deflate.c>
AddOutputFilterByType DEFLATE text/html text/plain text/xml text/css text/javascript application/javascript application/x-javascript
</IfModule>
Keep-Aliveの有効化
1つのTCP接続で複数のHTTPリクエストを処理:
# Keep-Alive
<IfModule mod_headers.c>
Header set Connection keep-alive
</IfModule>
JavaScript最適化の詳細テクニック
コード分割(Code Splitting)
必要な分だけJavaScriptを読み込む技術。Webpack等のバンドラーで実装。
Tree Shaking
使用していないコードを自動で削除する技術。
非同期読み込み
<script src="script.js" async></script>
<script src="script.js" defer></script>
継続的な監視とメンテナンス
表示速度の改善は一度やって終わりではありません。継続的な監視が重要です。
定期的なチェック項目
週次チェック
- PageSpeed Insightsでのスコア確認
- 主要ページの表示時間測定
- Core Web Vitalsの状況確認
月次チェック
- Google Search ConsoleのCore Web Vitalsレポート確認
- Google Analyticsでの平均読み込み時間確認
- サーバーリソース使用状況の確認
四半期チェック
- 新しい最適化技術の調査・導入検討
- 使用していないプラグイン・コードの整理
- 画像ライブラリの見直し
監視ツールの活用
Google Search Console
「ウェブに関する主な指標」レポートで、実際のユーザーデータを確認。
GTmetrix
詳細なパフォーマンス分析が可能。無料版でも十分使える。
WebPageTest
様々な条件でのテストが可能。上級者向け。
改善事例とその効果
実際の改善事例をご紹介します(クライアント様の許可を得て掲載)。
事例1:ECサイトの大幅改善
業種:アパレルEC
改善前:
- PageSpeed Insightsスコア:27点
- 平均読み込み時間:8.2秒
- 直帰率:68%
実施した改善:
- 商品画像のWebP変換+圧縮
- 未使用CSS・JavaScriptの削除
- CDNの導入
- データベースの最適化
- キャッシュプラグインの導入
改善後:
- PageSpeed Insightsスコア:81点
- 平均読み込み時間:2.1秒
- 直帰率:42%
- コンバージョン率:1.8% → 2.7%(+50%向上)
事例2:コーポレートサイトの改善
業種:製造業
改善前の課題:
- 「会社名 + サービス名」での検索順位が20位圏外
- 問い合わせ数の減少
改善内容:
- 画像の遅延読み込み実装
- 不要なプラグイン削除(12個→5個)
- PHPバージョン更新(7.4→8.1)
- 軽量テーマへの変更
結果:
- PageSpeed Insightsスコア:34点→76点
- 「会社名 + サービス名」で3位に上昇
- 問い合わせ数が月間15件→28件に増加
まとめ:表示速度改善のロードマップ
長い記事を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。最後に、実践的なロードマップをお示しします。
【第1週】現状把握と簡単な改善
- PageSpeed Insightsで主要ページをチェック
- Google Search ConsoleでCore Web Vitals確認
- 画像圧縮の実施
- 遅延読み込みの実装
【第2-3週】中級改善の実施
- 不要なプラグイン・コードの削除
- CSS・JavaScriptの圧縮
- キャッシュ設定の最適化
- WebPフォーマットの導入検討
【第4週以降】高度な最適化
- CDNの導入検討
- サーバー設定の見直し
- 継続的な監視体制の構築
- 新技術の調査・導入
効果測定のポイント
改善効果は以下の指標で測定しましょう:
- 技術指標:PageSpeed Insightsスコア、Core Web Vitals
- SEO指標:検索順位、オーガニック流入数
- ビジネス指標:直帰率、コンバージョン率、売上
重要な心構え
表示速度の改善は、技術的な施策である以上にユーザーファーストの考え方が重要です。「ユーザーにとって本当に価値のある改善か?」を常に問いかけながら進めることが、長期的な成功につながります。
また、完璧を求めすぎないことも大切です。スコア100点を目指すよりも、ユーザーが快適に感じるレベルを維持しながら、他のSEO施策やコンテンツ改善とのバランスを取ることが重要ですね。