インシデント・アクシデントの違いとは?初心者向けに基本から解説

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ビジネスの現場でよく聞く「インシデント」と「アクシデント」という言葉。

似たような意味で使われることも多いため、「どちらを使えばいいのかわからない」「正確な違いが理解できていない」と感じている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、インシデントとアクシデントの違いについて、初心者の方にもわかりやすく解説します。

それぞれの定義から具体的な事例、企業への影響、さらには適切な管理方法まで、実務で役立つ知識を網羅的にお伝えしていきます。

インシデントとアクシデントの基本的な違い

インシデントとアクシデントの最も重要な違いは、実際に損害や被害が発生したかどうかという点にあります。

インシデントとは何か

インシデント(incident)とは、「出来事」「事件」を意味する英単語で、ビジネスにおいては重大な事故に発展する可能性があった事象を指します。

具体的には、以下のような特徴があります。

  • 実際の損害や被害は発生していない
  • しかし、一歩間違えれば大きな問題になっていた可能性がある
  • 事前に発見・対処することで事故を防げた状況

たとえば、システムで異常なアクセスを検知したものの、実際にはデータの流出や損害は発生しなかった場合などがインシデントに該当します。

アクシデントとは何か

一方、アクシデント(accident)は「事故」を意味し、実際に損害や被害が発生した事象を指します。

アクシデントの特徴は以下の通りです。

  • 実際に損害、被害、影響が発生している
  • 復旧や対応のための具体的な措置が必要
  • 場合によっては損害賠償や法的責任が生じる可能性がある

システムへの不正アクセスによって実際に個人情報が流出し、顧客に被害が及んだ場合は、アクシデントとして扱われます。

インシデントとアクシデントの分類基準

インシデントとアクシデントを正確に分類するためには、以下の判定基準を活用することが重要です。

影響レベルによる分類

レベル分類内容
レベル0インシデント実害なし、影響なし
レベル1インシデント軽微な処置で済む程度
レベル2アクシデント中程度の影響、処置が必要
レベル3以上アクシデント重大な影響、高度な処置が必要

業界別のインシデント・アクシデント事例

IT・情報セキュリティ分野

  • インシデント:不正アクセスの試行を検知したが、侵入は阻止された
  • アクシデント:マルウェア感染により業務システムが停止し、復旧に数日を要した

医療・看護分野

  • インシデント:薬の取り違えに気づき、投与前に正しい薬に変更した
  • アクシデント:薬の取り違えにより患者に副作用が発生し、治療が必要となった

製造業

  • インシデント:機械の異常音を作業員が発見し、点検により故障を未然に防いだ
  • アクシデント:機械の故障により生産ラインが停止し、製品の納期に影響が出た

インシデント管理とアクシデント管理の重要性

インシデント管理の目的と効果

インシデント管理は、重大な事故を未然に防ぐことを主な目的としています。

適切なインシデント管理により、以下の効果が期待できます。

  • 同様のインシデントの再発防止
  • 組織全体のリスク意識向上
  • 業務プロセスの改善
  • コストの削減

アクシデント管理の目的と効果

アクシデント管理は、発生した事故の被害拡大を防ぎ、再発を防止することを目的としています。

効果的なアクシデント管理には以下のメリットがあります。

  • 迅速な復旧による業務への影響最小化
  • 顧客や取引先への信頼維持
  • 法的リスクの軽減
  • 組織の危機管理能力向上

インシデントとアクシデントが企業に与える影響

インシデント発生時の企業への影響

インシデントは実害が発生していないとはいえ、企業に以下のような影響を与える可能性があります。

対応コストの発生
インシデントの調査や原因分析、再発防止策の策定には時間と人的リソースが必要です。

複数のインシデントが同時発生した場合、通常業務に支障をきたす可能性もあります。

組織の信頼性への影響
頻繁にインシデントが発生する組織は、管理体制に問題があると判断される場合があります。

取引先や顧客からの信頼低下につながるリスクも考慮する必要があります。

アクシデント発生時の企業への影響

アクシデントが発生した場合、企業は以下のような深刻な影響を受ける可能性があります。

業務停止による売上損失
システム障害や設備故障により業務が停止した場合、直接的な売上損失が発生します。

2024年の統計によると、企業のセキュリティインシデント件数は587件に達し、前年比53%増となっています。

損害賠償責任の発生
顧客情報の漏洩や製品の欠陥により顧客に損害を与えた場合、法的責任を問われる可能性があります。

日本ネットワークセキュリティ協会の調査では、個人情報流出1件あたりの平均想定損害額は6億3,767万円に及んでいます。

企業の信用失墜
重大なアクシデントは報道される可能性が高く、企業のブランドイメージに長期的な影響を与えます。

信用回復には多大な時間とコストを要するため、予防策の重要性が高まっています。

インシデント・アクシデントの具体的な管理方法

インシデント管理の実践手順

1. インシデントの検出と報告
インシデントを早期に発見するための監視体制を整備し、発生時の報告ルートを明確化します。

報告は迅速性を重視し、24時間体制での対応が理想的です。

2. 影響度の評価と分類
発見されたインシデントの影響度を客観的に評価し、対応の優先順位を決定します。

以下の観点から評価を行います。

  • 業務への影響範囲
  • 顧客への影響度合い
  • 発生頻度
  • 拡大の可能性

3. 根本原因の分析
インシデントの表面的な原因だけでなく、根本原因を特定するために「なぜなぜ分析」を実施します。

5回の「なぜ」を繰り返すことで、真の原因にたどり着くことができます。

4. 再発防止策の策定と実施
根本原因に基づいた効果的な再発防止策を策定し、全社的に実施します。

策定した対策の効果測定も忘れずに行いましょう。

アクシデント管理の実践手順

1. 初動対応と被害拡大防止
アクシデント発生時は迅速な初動対応が重要です。

まず被害の拡大を防ぐための緊急措置を実施し、関係者への連絡を行います。

2. 被害状況の把握と報告
被害の範囲と程度を正確に把握し、経営陣や関係機関への報告を行います。

法的な報告義務がある場合は、定められた期限内に適切な報告を行う必要があります。

3. 復旧作業と業務継続
業務への影響を最小限に抑えるため、計画的な復旧作業を実施します。

代替手段による業務継続も併せて検討します。

4. 事後対応と改善策の実施
アクシデントの原因分析を行い、同様の事故の再発防止策を策定・実施します。

関係者への報告や謝罪、補償についても適切に対応する必要があります。

インシデント・アクシデント予防のための組織体制

予防策の基本的な考え方

インシデント・アクシデントの予防には、以下の基本原則が重要です。

リスクの事前評価
業務プロセスや使用システムに潜むリスクを定期的に評価し、優先度を付けて対策を実施します。

リスク評価は年1回以上の頻度で実施することが推奨されます。

従業員教育の徹底
全従業員がインシデント・アクシデントの重要性を理解し、適切な行動を取れるよう教育を実施します。

特に新入社員や部署異動者には重点的な教育が必要です。

継続的な改善活動
予防策の効果を定期的に検証し、必要に応じて見直しを行います。

PDCAサイクルを回すことで、組織の安全性を継続的に向上させることができます。

効果的な組織体制の構築

専任担当者の配置
インシデント・アクシデント管理の専任担当者を配置し、責任と権限を明確化します。

組織規模に応じて、チーム体制での運用も検討しましょう。

部門間の連携強化
インシデント・アクシデントは複数部門に影響を与える場合が多いため、部門間の連携体制を構築します。

定期的な連絡会議や情報共有の仕組みを整備することが重要です。

外部専門機関との連携
自社だけでは対応が困難な案件に備え、外部の専門機関との連携体制を構築します。

契約や連絡体制を事前に整備しておくことで、緊急時の迅速な対応が可能になります。

インシデント・アクシデント管理における最新動向

デジタル化による管理の効率化

近年、インシデント・アクシデント管理においてもデジタル技術の活用が進んでいます。

AIを活用した予兆検知
人工知能技術を活用することで、従来では発見が困難だった異常の兆候を早期に検知できるようになりました。

機械学習により、過去のデータから将来のリスクを予測することも可能です。

クラウドベースの管理システム
クラウド技術により、リアルタイムでの情報共有や遠隔からの管理が可能になりました。

複数拠点を持つ企業では特に効果的です。

法規制の強化と対応

個人情報保護法の改正やサイバーセキュリティ関連法規の整備により、企業の責任はより重くなっています。

2024年の個人情報漏洩件数は過去最多の1万3,279件を記録し、企業の対策強化が急務となっています。

適切なインシデント・アクシデント管理は、法的リスクの軽減にも直結する重要な取り組みです。

まとめ

インシデントとアクシデントの違いは、実際に損害や被害が発生したかどうかという点にあります。

インシデントは「未然に防げた事故の一歩手前」、アクシデントは「実際に発生した事故」として理解することが重要です。

どちらも企業経営に大きな影響を与える可能性があるため、適切な管理体制の構築と継続的な改善活動が不可欠です。

特に近年は、デジタル化の進展により新たなリスクも増加しているため、最新の技術と知見を活用した対策が求められています。

この記事で紹介した基本的な知識と実践的な手法を参考に、自社のインシデント・アクシデント管理体制の見直しと強化を進めていただければと思います。

適切な管理により、安全で持続可能な事業運営を実現しましょう。

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