ウェブサイトの表示速度を測定するツールとして広く知られているPageSpeed Insightsですが、実は表示速度だけでなく、「ユーザー補助」「おすすめの方法」「SEO」の3つの重要な指標も評価されているのをご存知でしょうか?
この記事では、特に「ユーザー補助」に焦点を当て、その重要性から改善方法まで、初心者にもわかりやすく詳しく解説していきます。
目次
PageSpeed Insightsの「ユーザー補助」とは?
「ユーザー補助」とは、**アクセシビリティ(Accessibility)**のことです。英語で「使いやすさ」「便利さ」という意味を持つこの指標は、誰もが平等にウェブサイトを利用できるかどうかを測定します。
アクセシビリティの具体的な内容
アクセシビリティとは、具体的には以下のような要素を含みます:
- 身体的な制約を持つユーザーへの配慮:視覚障害、聴覚障害、運動機能障害など
- 技術的な制約への対応:古いブラウザ、スクリーンリーダー、キーボードナビゲーションなど
- 認知的な制約への配慮:読み書き困難、注意力散漫、記憶力の問題など
実際、これらの配慮は特別な人だけのものではありません。明るい屋外でスマートフォンを使う際の画面の見づらさや、マウスが壊れた際のキーボード操作など、誰もが日常的に経験する可能性があります。
なぜPageSpeed Insightsにユーザー補助が含まれているのか
PageSpeed Insightsの「ユーザー補助」は、GoogleのLighthouseエンジンを使用して評価されています。Googleがこの指標を重視する理由は明確です:
- ユーザーファーストの理念:Googleは「すべてのユーザーが情報にアクセスできる」ことを重視
- 法的コンプライアンス:多くの国でウェブアクセシビリティが法的要件となっている
- SEOへの間接的な影響:ユーザビリティの向上は検索エンジンにも評価される
ユーザー補助の詳細な評価指標
PageSpeed Insightsのユーザー補助では、40以上の詳細な項目が評価されます。以下では、主要な評価指標について詳しく解説します。
1. 画像と代替テキスト関連
画像要素に[alt]属性が指定されていません
評価内容:すべての画像に適切な代替テキストが設定されているか
重要度:★★★★★(最重要)
改善方法:
- 情報を伝える画像には具体的で分かりやすいalt属性を設定
- 装飾的な画像には空のalt属性(
alt=""
)を設定 - サムネイル画像と記事タイトルが重複する場合は、alt属性を空にする
Copy<!-- 良い例 -->
<img src="graph.jpg" alt="2024年のウェブサイト表示速度の推移グラフ">
<!-- 装飾画像の場合 -->
<img src="decoration.jpg" alt="">
<!-- 悪い例 -->
<img src="graph.jpg" alt="グラフ">
画像要素に冗長なalt属性が指定されています
評価内容:alt属性が周囲のテキストと重複していないか
重要度:★★★☆☆
改善方法:
- 画像の近くに同じ内容のテキストがある場合は、alt属性を空にする
- 画像とキャプションが重複しないよう調整
2. 色とコントラスト関連
背景色と前景色のコントラスト比が十分ではありません
評価内容:テキストと背景色のコントラスト比が適切か
重要度:★★★★☆
改善方法:
- 通常のテキストは4.5:1以上のコントラスト比を確保
- 大きなテキスト(18pt以上)は3:1以上のコントラスト比を確保
- 白背景には濃い色のテキスト、黒背景には薄い色のテキストを使用
実用的なツール:
3. 見出し構造関連
見出し要素が順番通りに配置されていません
評価内容:h1からh6の見出しタグが適切な順序で使用されているか
重要度:★★★★☆
改善方法:
- h1タグは1ページに1つのみ使用
- 見出しはh1 → h2 → h3の順番で使用(h2の次にh4を使うのはNG)
- 見出しの階層は論理的な文書構造を反映
Copy<!-- 正しい見出し構造 -->
<h1>PageSpeed Insightsの完全ガイド</h1>
<h2>ユーザー補助とは</h2>
<h3>評価基準</h3>
<h3>改善方法</h3>
<h2>パフォーマンス指標</h2>
<!-- 間違った見出し構造 -->
<h1>PageSpeed Insightsの完全ガイド</h1>
<h3>ユーザー補助とは</h3><!-- h2を飛ばしている -->
4. フォーム関連
フォーム要素にラベルが関連付けられていません
評価内容:フォーム要素に適切なラベルが設定されているか
重要度:★★★★★
改善方法:
- すべてのinput要素にlabelタグを関連付け
- placeholder属性だけでなく、明確なラベルを提供
- 必須項目の明示
Copy<!-- 良い例 -->
<label for="email">メールアドレス(必須)</label>
<input type="email" id="email" name="email" required>
<!-- 悪い例 -->
<input type="email" name="email" placeholder="メールアドレス">
5. キーボードナビゲーション関連
キーボードでアクセスできない要素があります
評価内容:キーボードだけでサイト内を移動できるか
重要度:★★★★☆
改善方法:
- すべての操作可能要素にタブ移動を対応
- フォーカス表示の視覚的な明確化
- 論理的なタブ順序の設定
Copy/* フォーカス表示の改善 */
button:focus, a:focus {
outline: 2px solid #007cba;
outline-offset: 2px;
}
フォーカス順序が適切ではありません
評価内容:タブキーでの移動順序が論理的か
重要度:★★★☆☆
改善方法:
- tabindex属性を適切に設定
- 視覚的な順序と論理的な順序を一致させる
6. リンク関連
リンクに識別しやすい名前が設定されていません
評価内容:リンクの目的が明確に示されているか
重要度:★★★★☆
改善方法:
- 「こちら」「詳細」だけでなく、具体的なリンク先を示す
- 外部リンクの場合はその旨を明記
- アイコンリンクには適切なaria-labelを設定
Copy<!-- 良い例 -->
<a href="/contact" aria-label="お問い合わせページへ">お問い合わせ</a>
<!-- 悪い例 -->
<a href="/contact">こちら</a>
7. ARIA属性関連
ARIA属性が適切に使用されていません
評価内容:ARIA属性が正しく実装されているか
重要度:★★★☆☆
改善方法:
- aria-labelでアクセシブルな名前を提供
- aria-hiddenで装飾要素を非表示
- aria-expandedで展開状態を示す
Copy<!-- ドロップダウンメニューの例 -->
<button aria-expanded="false" aria-controls="menu">メニュー</button>
<ul id="menu" aria-hidden="true">
<li><a href="/about">会社概要</a></li>
<li><a href="/service">サービス</a></li>
</ul>
8. 動的コンテンツ関連
ライブリージョンが適切に設定されていません
評価内容:動的に更新されるコンテンツが適切に通知されるか
重要度:★★★☆☆
改善方法:
- aria-live属性で更新を通知
- aria-atomic属性で更新範囲を制御
Copy<!-- 検索結果の例 -->
<div aria-live="polite" aria-atomic="true">
<p>検索結果:<span id="result-count">0</span>件</p>
</div>
9. ボタンとインタラクティブ要素
ボタンにアクセシブルな名前が設定されていません
評価内容:ボタンの目的がスクリーンリーダーで理解できるか
重要度:★★★★☆
改善方法:
- テキストボタンには明確なテキストを記述
- アイコンボタンにはaria-labelを設定
- 画像ボタンにはalt属性を設定
Copy<!-- アイコンボタンの例 -->
<button aria-label="メニューを開く">
<svg><!-- ハンバーガーアイコン --></svg>
</button>
10. 表(テーブル)関連
テーブルヘッダーが適切に設定されていません
評価内容:テーブルの構造が理解しやすいか
重要度:★★★☆☆
改善方法:
- th要素でヘッダーを明確に
- scope属性で関連性を示す
- caption要素でテーブルの説明を追加
Copy<!-- 適切なテーブルの例 -->
<table>
<caption>2024年第1四半期の売上データ</caption>
<thead>
<tr>
<th scope="col">月</th>
<th scope="col">売上金額</th>
</tr>
</thead>
<tbody>
<tr>
<td>1月</td>
<td>100万円</td>
</tr>
</tbody>
</table>
実際の改善事例とその効果
事例1:alt属性の最適化
あるウェブサイトでは、サムネイル画像のalt属性にすべて記事タイトルを設定していました。これにより、スクリーンリーダーでは「記事タイトル、記事タイトル」と重複して読み上げられてしまい、ユーザー補助スコアが91点まで下がっていました。
改善後:
- サムネイル画像のalt属性を空に設定
- 情報を伝える画像のみに具体的なalt属性を設定
- 結果:スコアが100点に回復
事例2:コントラスト比の改善
グレーの背景に薄いグレーのテキストを使用していたサイトでは、コントラスト比が2.1:1と基準を大幅に下回っていました。
改善後:
- 背景色を白(#ffffff)に変更
- テキスト色を濃いグレー(#333333)に変更
- 結果:コントラスト比が12.6:1に改善
この改善により、視覚的な読みやすさが向上し、ユーザー補助スコアが大幅に改善されました。
事例3:フォーカス管理の改善
モーダルダイアログでキーボードナビゲーションが適切に動作していなかったサイトでは、フォーカス管理の問題が指摘されていました。
改善後:
- モーダル開閉時のフォーカス移動を制御
- Escキーでモーダルを閉じる機能を追加
- 結果:キーボードユーザビリティが大幅に向上
高得点を取るための具体的なコツ
1. アクセシビリティ対応済みのテーマを使用
WordPressや他のCMSを使用している場合、アクセシビリティに配慮されたテーマを選択することが重要です。
おすすめのアプローチ:
- テーマ選択時にアクセシビリティ対応を確認
- 定期的なテーマアップデートの実施
- 必要に応じてカスタマイズでアクセシビリティを強化
2. 色彩設計の最適化
実践的なアプローチ:
- WebAIM Color Contrast Checkerなどのツールを活用
- 色だけでなくテキストやアイコンでも情報を伝達
- カラーパレットの事前設計
3. キーボードナビゲーションのテスト
確認方法:
- Tabキーでの移動テスト
- Enterキーでの操作テスト
- フォーカス表示の視覚的確認
4. 構造化データの活用
具体的な実装:
- セマンティックHTMLの使用
- ARIA属性の適切な設定
- スキーママークアップの実装
ランディングページの表示速度とアクセシビリティ
LandingHubでは、ランディングページの表示速度最適化だけでなく、アクセシビリティの向上も重要視しています。
LandingHubが提供するアクセシビリティ対応
- 自動的なalt属性の最適化
- コントラスト比の自動チェック
- 見出し構造の最適化
- キーボードナビゲーションの確保
- ARIA属性の適切な設定
これらの機能により、PageSpeed Insightsの全項目で高得点を獲得できるランディングページを効率的に作成できます。
トラブルシューティング:よくある問題と解決法
問題1:画像のalt属性で点数が下がる
症状:alt属性を設定しているのにスコアが改善されない
原因と解決法:
- 重複するalt属性:同じページ内で同じalt属性を複数回使用
- 不適切なalt属性:ファイル名やURLをそのまま使用
- 解決法:各画像の役割に応じた適切なalt属性を設定
問題2:コントラスト比の警告が消えない
症状:色を変更してもコントラスト比の警告が表示される
原因と解決法:
- 透明度の問題:背景色に透明度が設定されている
- 継承の問題:親要素からの色指定が影響している
- 解決法:具体的な色指定と透明度の確認
問題3:見出し構造の警告
症状:「見出し要素が順番通りに配置されていません」
原因と解決法:
- 階層の飛び越し:h2の次にh4を使用
- 複数のh1:1ページに複数のh1タグが存在
- 解決法:論理的な見出し構造の再構築
問題4:キーボードナビゲーションの問題
症状:「キーボードでアクセスできない要素があります」
原因と解決法:
- tabindex属性の不適切な使用:負の値を不適切に使用
- フォーカス可能要素の不足:JavaScriptで作成した要素にtabindex未設定
- 解決法:フォーカス可能要素の適切な設定
スクリーンリーダーとの互換性
主要なスクリーンリーダー
- NVDA(Windows):無料のスクリーンリーダー
- JAWS(Windows):有料の高機能スクリーンリーダー
- VoiceOver(macOS/iOS):Apple製品標準のスクリーンリーダー
- TalkBack(Android):Android標準のスクリーンリーダー
スクリーンリーダー対応のポイント
適切な情報提供:
- aria-labelで要素の説明を提供
- aria-describedbyで詳細情報を関連付け
- role属性で要素の役割を明確化
Copy<!-- 検索フォームの例 -->
<form role="search">
<label for="search">サイト内検索</label>
<input type="search" id="search" aria-describedby="search-help">
<div id="search-help">キーワードを入力してEnterキーを押してください</div>
<button type="submit">検索</button>
</form>
PageSpeed Insightsの他の指標との関係
パフォーマンス指標との相互作用
アクセシビリティがパフォーマンスに与える影響:
- 適切なalt属性:画像の遅延読み込み最適化
- 構造化された見出し:SEO効果の向上
- キーボードナビゲーション:JavaScript軽量化の促進
SEO指標との関係
アクセシビリティがSEOに与える影響:
- 構造化されたHTML:検索エンジンの理解向上
- 適切なalt属性:画像検索での上位表示
- 見出し構造:コンテンツの階層理解
Googleの方針変更と将来の展望
アクセシビリティへの注目度向上
Googleは近年、アクセシビリティへの取り組みを強化しています:
- 法的要件の拡大:多くの国でウェブアクセシビリティが法的義務化
- 技術的進歩:AI技術を活用したアクセシビリティ支援の向上
- ユーザー体験の重視:Core Web Vitalsにアクセシビリティ要素が組み込まれる可能性
今後の対応戦略
短期的な対応:
- 現在のPageSpeed Insightsの指摘事項を全て改善
- 定期的な監査とメンテナンス
- チーム全体でのアクセシビリティ意識の向上
長期的な対応:
- デザインシステムの構築
- 自動化ツールの導入
- 継続的な教育と品質管理
まとめ:誰もが使いやすいウェブサイトを目指して
PageSpeed Insightsの「ユーザー補助」は、単なる評価指標ではありません。それは、すべてのユーザーが平等に情報にアクセスできるウェブサイトを作るための重要な指針です。
重要なポイントのまとめ
- ユーザー補助=アクセシビリティ:誰もが使いやすいサイト作りの指標
- 40以上の評価項目:alt属性、コントラスト比、見出し構造、ARIA属性など
- 継続的な取り組み:一度の改善ではなく、継続的なメンテナンスが必要
- 技術的な専門知識:HTMLやCSSの知識が改善には必要
今すぐできる行動
- 現在のスコアを確認:PageSpeed Insightsで自サイトを分析
- 優先度の設定:影響度の高い項目から改善開始
- 継続的な監視:定期的なスコアチェックとメンテナンス
- ツールの活用:アクセシビリティ検証ツールの導入
アクセシビリティの向上は、技術的な改善だけでなく、社会的な責任でもあります。高齢化社会が進む中、ウェブサイトのアクセシビリティはますます重要になるでしょう。
LandingHubのような専門ツールを活用することで、効率的にアクセシビリティの向上と表示速度の最適化を両立できます。
今こそ、誰もが使いやすいウェブサイト作りを始めませんか?
PageSpeed Insightsの「ユーザー補助」で100点を目指すことは、単なる数値の改善ではありません。それは、より多くの人々がウェブサイトを快適に利用できる、本当の意味でのユーザーファーストな体験を提供することなのです。