近年、多くの企業でcredo(クレド)の導入が注目されています。
従業員の価値観を統一し、組織全体の方向性を明確にする重要なツールとして活用されているcredoですが、「どのような意味があるのか」「どうやって作ればよいのか」と疑問に思う方も多いでしょう。
本記事では、credoの基本的な意味から具体的な作り方、成功事例まで分かりやすく解説します。
実際にcredoを導入して成果を上げている企業の例文も紹介するので、自社でのcredo作成の参考にしてください。
目次
credoとは?基本的な意味を解説
credoとは、ラテン語で「我は信じる」「信条」という意味を持つ言葉です。
企業活動においては、従業員が常に心がけるべき価値観や行動指針を簡潔に表現したものを指します。
credoの特徴と役割
企業理念との違いは、credoがより具体的で実践的な内容になっている点です。
経営理念が抽象的な表現で示されることが多いのに対し、credoは従業員が日々の業務で判断に迷った際の道しるべとなるよう、分かりやすい言葉で作られています。
credoの主な役割は以下の通りです。
- 従業員の行動基準を明確化する
- 組織全体の価値観を統一する
- 意思決定の際の判断材料を提供する
- 企業文化の醸成を促進する
credoが注目される背景
2000年代以降、企業の不祥事が相次いで発覚したことで、従業員のモラル意識向上が求められるようになりました。
金融商品取引法や公益通報者保護法の施行により、企業のコンプライアンス強化が重要視されています。
そのため、従業員の自主性を高め、倫理的な行動を促すツールとしてcredoが活用されるようになったのです。
credoの作り方の基本ステップ
効果的なcredoを作成するには、系統立ったアプローチが必要です。
以下の7つのステップに従って進めることで、組織に根付くcredoを作ることができます。
ステップ1:プロジェクトチーム編成
credoの作成は、多様な視点を取り入れるため、部門横断的なプロジェクトチームを結成します。
チーム構成のポイント
- 経営層、管理職、一般従業員を含める
- 異なる部署からメンバーを選出する
- 全従業員の意見を反映できる代表者を選ぶ
ステップ2:目標とスケジュール設定
credoを作成する目的を明確にし、具体的な計画を立てます。
設定すべき項目
- credoを作成する理由と期待する効果
- 作成期間(通常3~6ヶ月)
- 各工程の責任者と期限
- 浸透させるための具体的な方法
ステップ3:経営層へのヒアリング
経営陣の価値観や企業の将来ビジョンを把握するため、詳細なヒアリングを実施します。
ヒアリング内容
- 企業が大切にすべき価値観
- 従業員に期待する行動や姿勢
- 企業の社会的使命や存在意義
- 競合他社との差別化ポイント
ステップ4:従業員アンケート実施
全従業員を対象としたアンケートを実施し、現場の声を収集します。
アンケート項目例
- 現在の企業文化についてどう感じるか
- 理想とする職場環境とは何か
- 顧客や社会に対してどのような価値を提供したいか
- 仕事で大切にしている価値観は何か
ステップ5:文章化・明文化
収集した情報を基に、credoを具体的な文章として作成します。
文章化のポイント
- 簡潔で覚えやすい表現にする
- 抽象的すぎず、具体的すぎない適度なレベルに調整する
- 全従業員が理解できる言葉を使用する
- 行動の判断基準となるよう具体性を持たせる
ステップ6:フィードバック収集と調整
作成したcredoについて、再度経営層と従業員からフィードバックを得て調整します。
この段階では以下を確認します
- 企業の価値観が適切に反映されているか
- 従業員が実践可能な内容になっているか
- 理解しやすい表現になっているか
- 組織の特性に合致しているか
ステップ7:ツール化と共有準備
完成したcredoを組織全体に浸透させるためのツールを作成します。
作成するツール
- credoカード(携帯用)
- ポスター(掲示用)
- デジタルコンテンツ(社内システム用)
- 研修資料
credo作成時の注意点と失敗例
credoの作成では、よくある失敗パターンを理解し、事前に対策を講じることが重要です。
主な失敗例と対策
失敗例1:トップダウンでの作成
経営陣だけでcredoを作成してしまうと、従業員の共感を得られず、形骸化しやすくなります。
対策
- 従業員参加型の作成プロセスを採用する
- 現場の意見を積極的に取り入れる
- ボトムアップのアプローチを重視する
失敗例2:抽象的すぎる内容
「社会貢献する」「お客様を大切にする」など、どの企業にも当てはまるような内容では効果が期待できません。
対策
- 自社の特徴や独自性を反映させる
- 具体的な行動イメージができる表現にする
- 判断基準として機能するレベルの具体性を持たせる
失敗例3:理想が高すぎる設定
現実離れした理想的な内容では、従業員が実践できず、かえって組織の士気を下げる可能性があります。
対策
- 実現可能性を十分に検討する
- 段階的に目標レベルを設定する
- 現場の実情を踏まえた内容にする
失敗例4:作成後の放置
credoを作成しただけで満足し、浸透活動を怠ると、単なる飾り物になってしまいます。
対策
- 継続的な浸透活動を計画する
- 定期的な見直しと改善を行う
- 実践状況をモニタリングする
成功するcredoの特徴
効果的なcredoには以下の特徴があります。
- 具体性:行動の判断基準として機能する
- 共感性:従業員が納得できる内容
- 実現性:実際に実践可能なレベル
- 独自性:他社との差別化要素を含む
- 継続性:長期間にわたって価値を持つ
credo例文から学ぶ成功事例
実際にcredoを導入し、成果を上げている企業の事例を見てみましょう。
ジョンソン・エンド・ジョンソン「Our Credo」
1943年に策定された「我が信条(Our Credo)」は、企業credoの代表例です。
4つの責任を明確化
- 第一の責任:患者、医師、看護師などの顧客に対して
- 第二の責任:世界中で働く全社員に対して
- 第三の責任:地域社会および全世界の共同社会に対して
- 第四の責任:会社の株主に対して
このcredoの特徴は、ステークホルダーに対する責任の優先順位を明確にしている点です。
顧客を最優先とし、最後に株主への責任を置くという価値観が、80年近くにわたって同社の経営を支えています。
ザ・リッツ・カールトン「ゴールドスタンダード」
高級ホテルチェーンのリッツ・カールトンは、「ゴールドスタンダード」と呼ばれるcredoを展開しています。
主要な要素
- credo:お客様への心のこもったおもてなしと快適さの提供
- モットー:紳士淑女をおもてなしする私たちも紳士淑女です
- サービスの3ステップ:あたたかいご挨拶、お名前でのお呼びかけ、心のこもったお見送り
従業員一人ひとりがcredoカードを携帯し、判断に迷った際は2000ドルまでの決裁権を与えられています。
これにより、現場レベルでの迅速かつ適切な顧客対応が実現されています。
楽天グループ「楽天主義」
楽天グループのcredoは「成功のコンセプト」として5項目で構成されています。
5つの成功のコンセプト
- 常に改善、常に前進
- Professionalismの徹底
- 仮説→実行→検証→仕組化
- 顧客満足の最大化
- スピード!!スピード!!スピード!!
シンプルで覚えやすく、IT企業らしいスピード感を重視した内容になっています。
各項目が具体的な行動指針として機能し、全従業員が共通の価値観を持って業務に取り組めるよう設計されています。
credoを浸透させる効果的な方法
作成したcredoを組織に効果的に浸透させるには、継続的な取り組みが不可欠です。
credoカードの活用
携帯しやすいカードの作成
- 名刺サイズで携帯しやすいデザイン
- 高品質な紙材を使用して特別感を演出
- 経営陣が直接手渡しして重要性をアピール
活用方法
- 朝礼での読み上げ
- 会議前の確認
- 判断に迷った際の参照
組織的な浸透活動
入社時研修での導入
新入社員に対してcredoの意味と重要性を説明し、企業文化の理解を促進します。
研修内容
- credoの背景と目的
- 具体的な実践方法
- 先輩社員の体験談共有
- ディスカッションとワークショップ
定期的な振り返り
朝礼・全社会議での活用
- credoの読み上げ
- 実践事例の共有
- 課題の検討と改善策の議論
社内コミュニケーションツールの活用
- 社内SNSでの事例紹介
- 全社メールでの定期配信
- イントラネットでの常時掲載
評価制度との連動
credoの実践度を人事評価の項目に組み込むことで、浸透を加速させます。
評価のポイント
- credoに基づいた行動ができているか
- 他の従業員にcredoの実践を促しているか
- 困難な判断の際にcredoを活用できているか
継続的な改善活動
定期的な見直し
企業の成長や環境変化に応じて、credoの内容を見直します。
見直しのタイミング
- 年1回の定期見直し
- 事業戦略の大幅変更時
- 組織構造の変化時
- 社会情勢の大きな変化時
従業員フィードバックの収集
credoの浸透度や改善点について、定期的に従業員の意見を収集します。
フィードバック方法
- 無記名アンケート調査
- 部署別座談会
- 個人面談での確認
- 社内SNSでの意見収集
成功事例の共有
credoを実践して成果を上げた事例を積極的に社内で共有し、他の従業員の模範とします。
共有方法
- 社内報での事例紹介
- 表彰制度の設立
- 全社会議での発表
- メンター制度の活用
まとめ
credoは単なる企業スローガンではなく、従業員の日々の行動を導く重要な指針です。
効果的なcredoを作成するには、組織全体を巻き込んだ参加型のプロセスが不可欠であり、作成後の継続的な浸透活動が成功の鍵となります。
成功企業の事例を参考にしながら、自社の特性に合ったcredoを作成し、組織文化の向上と業績の向上を同時に実現していきましょう。
適切に運用されたcredoは、従業員のモチベーション向上、組織の結束力強化、そして企業の持続的な成長に大きく貢献するはずです。