ガバナンスとは簡単に解説：企業統治の意味とコンプライアンスとの違い

「ガバナンスが効いていない」「ガバナンス強化が必要」といった言葉をビジネスシーンでよく耳にしませんか？

企業の不祥事が報道されるたびに注目を集めるガバナンスですが、その正確な意味やコンプライアンスとの違いを理解している方は意外と少ないのが現状です。

本記事では、ガバナンスとは何かを簡単にわかりやすく解説し、コンプライアンスとの明確な違いや企業にとっての重要性についてお伝えします。

健全な企業経営を目指すために不可欠なガバナンスの基本知識を身につけましょう。

ガバナンスとは簡単に説明すると企業の管理体制

ガバナンス（Governance）とは、簡単に言うと「統治・支配・管理」を意味する言葉です。

企業におけるガバナンスは、「健全な企業経営を目指すために、企業自身が構築する管理体制」を指します。

ガバナンスの語源と基本的な意味

ガバナンスの語源は、古代ギリシャ語の「kubernan」にまで遡ります。

この言葉は「舵取り」を意味しており、船の進路を適切に管理することから転じて、組織や国家を統治することを表すようになりました。

現在のビジネス用語としてのガバナンスは、この「舵取り」の概念を企業経営に適用したものと考えることができます。

企業におけるガバナンスの役割

企業におけるガバナンスは、以下のような重要な役割を担っています。

• 不正や不祥事の防止
  組織内の監視体制を強化し、経営陣や従業員による不正行為を未然に防ぐ
• 意思決定の透明性確保
  企業の重要な意思決定プロセスを明確化し、ステークホルダーに対する説明責任を果たす
• リスク管理の強化
  事業運営に関わるさまざまなリスクを適切に識別・評価・管理する体制を構築

これらの役割を通じて、企業は持続的な成長と企業価値の向上を実現することができます。

ガバナンスとコンプライアンスの簡単な違い

ガバナンスとよく混同される概念にコンプライアンスがありますが、両者には明確な違いがあります。

コンプライアンスとは何か

コンプライアンス（Compliance）とは、「法令遵守」を意味する言葉です。

具体的には、企業が以下のようなルールを守ることを指します。

• 法律・法令
  会社法、金融商品取引法、独占禁止法など、企業活動に関わる各種法律
• 社内規範
  就業規則、行動規範、企業理念など、企業が定める内部ルール
• 社会的規範
  社会常識、マナー、道徳など、法的拘束力はないが社会から求められる行動基準

ガバナンスとコンプライアンスの本質的な違い

ガバナンスとコンプライアンスの違いを簡単に表すと以下のようになります。

つまり、ガバナンスはコンプライアンスを実現するための管理体制であり、コンプライアンスはガバナンスによって維持される法令遵守の状態と理解することができます。

コーポレートガバナンスとは簡単に企業統治のこと

企業におけるガバナンスは、一般的に「コーポレートガバナンス」と呼ばれます。

コーポレートガバナンスの定義

コーポレートガバナンス（Corporate Governance）とは、「企業統治」と訳され、企業が株主をはじめとするステークホルダーの利益を最大化するために構築する経営管理システムのことです。

具体的には、以下の要素から構成されます。

• 取締役会の設置と運営
• 社外取締役・監査役の導入
• 内部統制システムの構築
• 適切な情報開示の実施
• リスク管理体制の整備

コーポレートガバナンス・コードの役割

日本では2015年6月に、金融庁と東京証券取引所が共同で「コーポレートガバナンス・コード」を策定しました。

このコードは、上場企業が守るべき企業統治の原則を定めたもので、以下の5つの基本原則から構成されています。

1. 株主の権利・平等性の確保
2. 株主以外のステークホルダーとの適切な協働
3. 適切な情報開示と透明性の確保
4. 取締役会等の責務
5. 株主との対話

上場企業は、これらの原則に基づいてコーポレートガバナンス体制を構築し、実施状況を報告することが義務付けられています。

ガバナンス強化の簡単な方法とメリット

企業がガバナンスを強化することで得られるメリットと、その具体的な方法について解説します。

ガバナンス強化によるメリット

ガバナンスを強化することで、企業は以下のようなメリットを得ることができます。

企業価値の向上

適切なガバナンス体制により、企業の透明性と信頼性が向上し、株主や投資家からの評価が高まります。

不正・不祥事の防止

内部統制システムの強化により、組織内の不正行為や不祥事を未然に防ぐことができます。

資金調達の円滑化

優良な企業統治体制を持つ企業として認識されることで、金融機関からの融資や投資家からの資金調達が容易になります。

優秀な人材の確保

健全な経営を行う企業として認知されることで、優秀な人材の採用や既存従業員のモチベーション向上につながります。

ガバナンス強化の具体的方法

企業がガバナンスを強化するための主要な方法は以下の通りです。

内部統制システムの構築

業務プロセスの明文化、職務分離の徹底、定期的な内部監査の実施などにより、組織内の統制を強化します。

社外取締役・監査役の設置

外部の専門家や有識者を取締役や監査役に招聘することで、客観的な視点からの経営監督を実現します。

情報開示の充実

財務情報だけでなく、経営戦略、リスク情報、サステナビリティへの取り組みなど、幅広い情報を適切に開示します。

従業員教育の実施

全従業員を対象としたガバナンス・コンプライアンス教育を定期的に実施し、組織全体の意識向上を図ります。

まとめ

ガバナンスとは、企業が健全な経営を行うために自ら構築する管理体制のことです。

コンプライアンスが「法令や規則を守ること」であるのに対し、ガバナンスは「それらを守らせるための仕組み作り」という違いがあります。

現代の企業経営において、ガバナンスの強化は企業価値向上、不正防止、資金調達の円滑化など多くのメリットをもたらします。

特に上場企業では、コーポレートガバナンス・コードに基づいた体制構築が求められており、中小企業においても社会的信頼を獲得するためにガバナンス強化への取り組みが重要になっています。

内部統制システムの構築、社外取締役の設置、情報開示の充実、従業員教育の実施など、具体的な施策を通じて、持続的な企業成長を支える強固なガバナンス体制を構築していきましょう。