受託とは?分かりやすく解説|人事労務で知っておきたい基本知識

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導入文

現代のビジネス環境では、人材不足や業務効率化の課題から、多くの企業が外部への業務委託を検討しています。
その際によく耳にするのが「受託」という言葉ですが、正確な意味を理解していますか?
受託は単に「仕事を引き受けること」以上の意味を持ち、委託や請負といった類似用語との違いを理解することが重要です。
本記事では、人事労務担当者が知っておくべき受託の基本知識から、具体的な契約形態、メリット・デメリットまで分かりやすく解説します。
適切な外注活用により、自社のリソースを最大限に活用できるようになりましょう。

受託とは何か?基本的な定義と意味

受託(じゅたく)とは、企業や個人から依頼を受けて業務を引き受けることを指します。

受託には大きく分けて2つの意味があります。
1つ目は「依頼された業務を実行すること」。
2つ目は「依頼を受けて物品やお金を預かること」です。

ビジネスの現場では、主に前者の意味で使用されることが多く、システム開発、事務処理、製造業務など様々な分野で受託業務が行われています。

受託という言葉を冠した用語も数多く存在します。
例えば「受託開発」「受託製造」「受託手荷物」などがあり、それぞれ特定の業務分野において依頼を受けて業務を行うことを表しています。

受託とは何が違う?類似用語との比較

受託と混同されやすい用語がいくつか存在します。
それぞれの違いを正確に理解することで、適切な契約形態を選択できるようになります。

受託と委託の違い

委託は「業務を他者に依頼すること」を意味し、受託は「依頼された業務を引き受けること」を意味します。

つまり、委託は依頼する側の立場を表し、受託は依頼を受ける側の立場を表します。
同じ業務でも、発注者の視点では「委託」、受注者の視点では「受託」となります。

受託と請負の違い

請負は「依頼を受けて成果物を納品する契約形態」です。
一方、受託は「業務を遂行することが目的」で、必ずしも成果物の納品義務はありません。

項目受託請負
契約義務業務の遂行成果物の完成・納品
報酬の発生業務時間・工数に応じて成果物の完成・納品時
責任の範囲善管注意義務瑕疵担保責任

受託と委任・準委任の違い

委任は法律行為に関する業務を他者に依頼することです。
準委任は法律行為以外の業務を他者に依頼することを指します。

受託は業務を引き受ける側の立場を表す用語であり、委任・準委任は業務を依頼する側の契約形態を表します。

受託とはどんなメリットがある?企業側の視点

企業が業務を外部に受託してもらうことで得られるメリットは多岐にわたります。

専門的なスキルとノウハウの活用

受託先企業は特定分野の専門家であることが多く、自社では持ち得ない高度な技術や知識を活用できます。
例えば、システム開発を受託する企業は最新の技術動向を把握しており、効率的で高品質なシステムを構築できます。

人材不足の解消

現在多くの企業が直面している人材不足問題を、受託により解決できます。
特に専門性の高い業務では、適切な人材を採用・育成するより、専門企業に受託してもらう方が効率的です。

コア業務への集中

定型的な業務や専門外の業務を受託してもらうことで、自社の従業員はより重要なコア業務に集中できます。
これにより、企業全体の生産性向上が期待できます。

コストの最適化

必要な時に必要な分だけ業務を受託してもらえるため、常時雇用するよりもコストを抑制できる場合があります。
特に繁忙期と閑散期の差が大きい業務では、大きなメリットとなります。

受託とはどんなデメリットがある?注意すべきポイント

一方で、受託にはいくつかのデメリットや注意点も存在します。

情報セキュリティリスク

業務を外部に受託してもらう際、機密情報や個人情報を共有する必要がある場合があります。
適切な情報管理体制を持つ受託先を選定し、秘密保持契約を締結することが重要です。

品質管理の難しさ

受託先の業務品質を継続的に管理することは容易ではありません。
明確な品質基準を設定し、定期的なモニタリング体制を構築する必要があります。

依存リスク

特定の受託先に過度に依存すると、その企業に問題が発生した際に自社の業務に大きな影響を与える可能性があります。
複数の受託先を確保するなど、リスク分散を図ることが重要です。

内部ノウハウの蓄積困難

業務を外部に受託してもらうことで、自社内にノウハウが蓄積されにくくなる可能性があります。
将来的に内製化を検討する場合には、適切な知識移転を計画する必要があります。

受託とは何の契約?主要な契約形態

受託業務を行う際の契約形態は、業務の性質や目的に応じて選択されます。

準委任契約による受託

準委任契約は、法律行為以外の業務の遂行を目的とした契約です。
成果物の完成義務はなく、業務を遂行することが契約の目的となります。

  • 適用業務: システム保守、事務処理、コンサルティング
  • 報酬: 時間単価や月額固定
  • 責任: 善管注意義務

請負契約による受託

請負契約は、特定の仕事の完成を目的とした契約です。
成果物の完成・納品が契約の中心となります。

  • 適用業務: システム開発、製造業務、建設工事
  • 報酬: 成果物の完成・納品時
  • 責任: 瑕疵担保責任

SES契約による受託

SES(システムエンジニアリングサービス)契約は、IT分野における準委任契約の一種です。
エンジニアの技術力を提供することが目的となります。

  • 適用業務: システム開発支援、技術支援
  • 報酬: 月額固定や時間単価
  • 特徴: 客先常駐が一般的

受託とは人事労務でどう扱う?実務上の注意点

人事労務の観点から受託業務を管理する際には、いくつかの重要な注意点があります。

労働者性の判断

受託業務を行う個人が「労働者」に該当するかどうかの判断は重要です。
労働者に該当する場合、労働基準法等の適用を受けることになります。

労働者性の判断基準:

  • 業務遂行上の指揮監督の有無
  • 報酬の性質(労務対価性)
  • 事業者性の有無
  • 専属性の程度

偽装請負の防止

形式上は請負契約でありながら、実質的には派遣と同様の働き方をしている「偽装請負」は法的な問題となります。

偽装請負を防ぐポイント:

  • 受託先企業が業務の指示・管理を行う
  • 委託元企業は直接指示を出さない
  • 成果物に対する責任を受託先が負う

契約書の整備

受託業務に関する契約書は、後々のトラブルを防ぐために詳細に定めておく必要があります。

契約書に記載すべき事項:

  • 業務内容の詳細
  • 報酬の算定方法と支払い条件
  • 責任の範囲と分担
  • 機密保持に関する取り決め
  • 契約期間と更新条件

受託とは今後どうなる?将来の展望

受託業務は今後も重要な役割を果たしていくと考えられます。

デジタル化の進展

DXの推進により、システム開発やデジタル技術に関する受託業務の需要は増加傾向にあります。
特にAI、IoT、クラウドサービスなどの新技術分野では、専門性の高い受託業務が求められています。

働き方の多様化

リモートワークの普及により、地理的制約を受けない受託業務が増加しています。
これにより、より多様な人材が受託業務に参画できる環境が整いつつあります。

規制の強化

労働者保護の観点から、受託業務に関する規制は今後より厳格になる可能性があります。
適切な契約形態の選択と、法令遵守がより重要になってきます。

まとめ

受託とは、企業や個人から依頼を受けて業務を引き受けることを指します。
委託(依頼すること)や請負(成果物の完成義務がある)との違いを理解し、適切な契約形態を選択することが重要です。

受託業務の活用により、専門スキルの活用、人材不足の解消、コア業務への集中などのメリットを得られる一方、情報セキュリティリスクや品質管理の課題もあります。

人事労務の観点では、労働者性の判断、偽装請負の防止、適切な契約書の整備が重要なポイントとなります。

今後もデジタル化の進展や働き方の多様化により、受託業務の重要性は高まっていくでしょう。
適切な知識を身につけて、効果的な受託業務の活用を図っていきましょう。

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