「つまり何が言いたいの?」「結論から言って」「その根拠は何?」こんな指摘を受けた経験はありませんか?
ビジネスシーンで相手に確実に伝わる説明をするためには、論理的で分かりやすい構成が欠かせません。そこで活用したいのが「PREP法」です。
PREP法は、結論→理由→具体例→結論の順番で構成する説明手法で、短時間で相手に説得力のある内容を伝えることができます。プレゼンテーション、会議での発言、上司への報告、ビジネス文書の作成まで、あらゆる場面で威力を発揮する万能スキルです。
この記事では、PREP法の基本から実践的な活用方法、よく比較されるSDS法やDESC法との違い、効果的な練習法まで、相手に伝わる説明の仕方を体系的に解説します。
目次
PREP法とは?基本の構成を理解しよう
PREP法とは、論理的で分かりやすい説明を行うための文章構成モデルです。
PREPは以下の4つの要素の頭文字を取ったものです。
- P(Point):要点・結論・主張
- R(Reason):理由・根拠
- E(Example):具体例・事例・データ
- P(Point):要点・結論の再確認
この順番に沿って話を組み立てることで、聞き手にとって理解しやすく、記憶に残りやすい説明が可能になります。
PREP法の基本的な流れ
PREP法を使った説明は、次のような流れで進めます。
1. Point(結論)
最初に伝えたい結論や主張を明確に述べます。
2. Reason(理由)
なぜその結論に至ったのか、論理的な理由を説明します。
3. Example(具体例)
理由を裏付ける具体的な事例、データ、体験談を提示します。
4. Point(結論の再確認)
最後にもう一度結論を述べて、メッセージを印象付けます。
この構成により、聞き手は最初に「何について話すのか」を理解し、その後の理由と具体例で納得感を得られるのです。
PREP法のメリット・効果とは?なぜビジネスで重要なのか
PREP法がビジネスコミュニケーションで重宝される理由は、以下の4つの効果にあります。
1. 説得力が格段に向上する
PREP法では結論を2回伝えるため、相手の印象に強く残ります。
さらに、理由と具体例によって論理的な根拠を示すことで、単なる主張ではなく説得力のある提案として相手に受け取ってもらえます。実際に、多くの企業研修でPREP法が採用されているのは、この説得力向上効果が実証されているためです。
2. 短時間で要点が伝わる
結論を最初に述べることで、聞き手は「何についての話なのか」をすぐに理解できます。
これにより、「結局何が言いたいの?」という状況を避け、限られた時間の中で効率的にコミュニケーションを取ることが可能になります。会議や商談など、時間が限られたビジネスシーンでは特に重要な効果です。
3. 聞き手のストレスを軽減する
従来の起承転結型の説明では、聞き手は最後まで結論が分からず、ストレスを感じることがあります。
PREP法なら最初に結論を示すため、聞き手は安心して話を聞き続けることができます。この心理的な負担軽減は、相手との良好な関係構築にもつながります。
4. 思考の整理習慣が身につく
PREP法を使って説明するためには、自分の考えを「結論・理由・根拠」に分けて整理する必要があります。
この習慣が身につくことで、普段から論理的に物事を考える力が向上し、より質の高い判断や提案ができるようになります。
PREP法に似た他の説明手法との使い分け
効果的なコミュニケーションのためには、場面に応じて最適な説明手法を選択することが重要です。PREP法以外にも、ビジネスシーンでよく使われる説明手法があります。
SDS法:情報共有に特化した構成法
SDS法は、Summary(要約)→ Details(詳細)→ Summary(要約)の構成で情報を伝える手法です。
SDS法の構成
- S(Summary):全体の要約
- D(Details):詳細な説明
- S(Summary):要約の再確認
PREP法とSDS法の使い分け
項目 | PREP法 | SDS法 |
---|---|---|
目的 | 説得・提案 | 情報共有・報告 |
重点 | 結論の説得力 | 情報の網羅性 |
適用場面 | プレゼン、提案書 | 業務報告、説明書 |
DESC法:対人コミュニケーションに特化した手法
DESC法は、相手との対話や交渉において相手の感情に配慮しながら自分の意見を伝える手法です。特に、相手に行動変容を求める場面で威力を発揮します。
DESC法の構成
- D(Describe):状況の客観的な描写
- E(Express):感情・意見の表現
- S(Specify):具体的な要求・提案
- C(Consequences):結果・効果の説明
PREP法とDESC法の使い分け
項目 | PREP法 | DESC法 |
---|---|---|
目的 | 論理的説明・説得 | 対人関係重視の対話 |
重点 | 論理性・明確性 | 感情への配慮 |
適用場面 | 一方向の説明 | 双方向の交渉・相談 |
3つの手法の使い分け指針
- 説得・提案したい→PREP法
- 情報を網羅的に伝えたい→SDS法
- 相手との関係性を重視した対話→DESC法
PREP法の使い方・実践方法を場面別に解説
PREP法は様々なビジネスシーンで活用できる汎用性の高い手法です。ここでは、代表的な活用場面での使い方を詳しく解説します。
プレゼンテーションでのPREP法活用
プレゼンテーションでは、聞き手の関心を引きつけ、提案内容を確実に伝える必要があります。
【例文】
Point(結論):来年度のマーケティング予算を20%増額することを提案します。
Reason(理由):なぜなら、デジタル広告市場の拡大に対応し、競合他社との差別化を図る必要があるからです。
Example(具体例):具体的には、業界全体のデジタル広告費が前年比15%増加している中、弊社の予算は据え置きのため、競合A社に市場シェアで2ポイント差をつけられています。また、新サービスのテストマーケティングでは、予算増額により顧客獲得コストが30%改善されることが確認されています。
Point(結論):以上の理由から、マーケティング予算の20%増額をお願いします。
上司への報告でのPREP法活用
上司への報告では、簡潔性と正確性が求められます。PREP法を使うことで、効率的に状況を伝えることができます。
【良い例】
Point(結論):プロジェクトの進捗ですが、予定より1週間の遅れが発生しています。
Reason(理由):原因は、システム要件の追加変更により、開発工数が当初見積もりを20%上回ったためです。
Example(具体例):具体的には、先週お客様から新機能追加の要望があり、設計変更が必要となりました。エンジニア2名で対応していますが、追加工数は40時間程度を見込んでいます。
Point(結論):そのため、全体として1週間の遅延となる見込みです。対応方法についてご相談させてください。
会議での発言におけるPREP法活用
会議では限られた時間で要点を伝える必要があります。PREP法により、簡潔で影響力のある発言が可能になります。
【例文】
Point(結論):新サービスのローンチ時期を1ヶ月前倒しすることを提案します。
Reason(理由):競合他社が類似サービスを準備中で、市場投入のタイミングが重要だからです。
Example(具体例):業界誌の情報によると、競合B社が来月末にサービス発表を予定しています。また、現在の開発進捗は80%で、品質を保ちながら前倒しは十分可能です。
Point(結論):先行者優位を確保するため、ローンチ時期の前倒しをご検討ください。
PREP法の例文集【シーン別・用途別】
PREP法の理解を深めるため、様々なシーンでの具体的な例文をご紹介します。
ビジネス提案での例文
Point(結論):リモートワーク制度の本格導入を提案します。
Reason(理由):従業員満足度向上と優秀人材確保のためです。
Example(具体例):導入テストでは生産性が15%向上、離職率も30%減少となっています。
Point(結論):リモートワーク制度の導入により、競争力強化を図りましょう。
問題解決提案での例文
Point(結論):顧客サポート体制を24時間対応に変更することを提案します。
Reason(理由):現在の営業時間内対応では、顧客満足度の低下と機会損失が発生しているためです。
Example(具体例):先月の顧客アンケートでは、「サポート対応時間への不満」が苦情の40%を占めています。また、海外展開を進める中で、時差による対応遅延も課題となっています。
Point(結論):24時間サポート体制により、顧客満足度向上と事業拡大を実現しましょう。
面接での自己PRにおける例文
Point(結論):私の強みは、チームの生産性を向上させるコミュニケーション能力です。
Reason(理由):前職では、異なる部署間の連携を促進し、プロジェクト効率を大幅に改善してきました。
Example(具体例):具体的には、月1回の部署間ミーティングを企画・運営し、情報共有の仕組みを構築しました。その結果、プロジェクト完了時間が平均25%短縮され、チーム全体のモチベーションも向上しました。
Point(結論):このコミュニケーション力を活かし、御社でもチーム成果の最大化に貢献したいと考えています。
メール・文書作成での例文
件名:【重要】システムメンテナンスのお知らせ
Point(結論):来週水曜日に社内システムのメンテナンスを実施いたします。
Reason(理由):セキュリティ強化とシステム安定性向上のためです。
Example(具体例):作業時間は午前2時から6時までの4時間を予定しており、この間は全社システムが利用できなくなります。事前のデータ保存と、当日の業務調整をお願いします。
Point(結論):ご不便をおかけしますが、システム品質向上のためご協力をお願いいたします。
PREP法の練習方法・トレーニング手法
PREP法を確実に身につけるためには、継続的な練習が必要です。効果的な練習方法をご紹介します。
日常会話でのPREP法練習
最も効果的な練習は、普段の会話でPREP法を意識することです。
練習のコツ
- 「結論から言うと」「なぜなら」「例えば」「だから」などの接続詞を意識的に使う
- 短い話題から始めて、徐々に複雑な内容にチャレンジする
- 家族や友人との会話でも練習の機会を作る
ライティング練習での習得法
文章作成を通じてPREP法を練習することで、論理的思考力も同時に向上します。
練習手順
- 日記やブログをPREP法で書く
- ビジネスメールをPREP法で構成する
- 企画書や提案書にPREP法を適用する
1分間スピーチでのトレーニング
短時間での説明練習により、PREP法の基本パターンを身体に覚え込ませることができます。
トレーニング方法
- 毎日異なるテーマで1分間スピーチを行う
- スマホで録音して後から確認する
- 同僚や家族にフィードバックをもらう
グループディスカッションでの実践練習
他者との議論の中でPREP法を使うことで、実践的なスキルが身につきます。
練習のポイント
- 自分の意見を述べる際は必ずPREP法を使う
- 相手の発言もPREP法で整理して理解する
- 建設的な議論を心がける
PREP法のデメリットと注意点
PREP法は非常に有効な手法ですが、すべての場面で最適とは限りません。適切な使い分けのために、デメリットも理解しておきましょう。
感情に訴える場面では効果が限定的
PREP法は論理的な説明に特化しているため、相手の感情に訴えかけたい場面では効果が制限されます。
注意が必要な場面
- 激励や慰めのメッセージ
- 創作的なプレゼンテーション
- 人間関係を重視する場面
長文や複雑な内容には不向き
PREP法は簡潔性を重視するため、詳細な説明や複雑な内容の全体像を伝える際には不向きな場合があります。
代替手法の検討が必要な場面
- 技術的な詳細説明
- 歴史的経緯の説明
- 複数の選択肢を並列で検討する場合
相手の知識レベルによる制約
結論を先に述べるPREP法では、聞き手が前提知識を持っていることが重要です。
対策方法
- 専門用語の事前説明
- 背景情報の簡潔な説明
- 相手の理解度の確認
慣れるまでは不自然に感じる場合がある
日本語の一般的な話法とは異なるため、最初は違和感を覚える人もいます。
克服方法
- 段階的な導入
- 短い内容から練習開始
- 継続的な反復練習
PREP法と他の説明手法との比較・使い分け
効果的なコミュニケーションのためには、場面に応じて最適な説明手法を選択することが重要です。
PREP法とSDS法の違いと使い分け
比較項目 | PREP法 | SDS法 |
---|---|---|
構成 | 結論→理由→具体例→結論 | 要約→詳細→要約 |
重点 | 結論の説得力 | 情報の網羅性 |
適用場面 | 提案・意見表明 | 報告・情報共有 |
効果 | 説得力向上 | 理解促進 |
PREP法が適している場面
- プレゼンテーション
- 提案書作成
- 意見表明
SDS法が適している場面
- 業務報告
- ニュース記事
- 説明書作成
PREP法とDESC法の使い分け
DESC法は、相手との対話や交渉において相手の感情に配慮しながら自分の意見を伝える手法です。
DESC法の構成
- D(Describe):事実の描写
- E(Express):感情の表現
- S(Suggest):提案
- C(Choose):選択肢の提示
使い分けの基準
- 一方的な説明が必要→PREP法
- 相手との合意形成が必要→DESC法
PREP法を活用した効果的なビジネスコミュニケーション術
PREP法を単なる説明手法として捉えるのではなく、戦略的なコミュニケーションツールとして活用することで、ビジネス成果を大幅に向上させることができます。
チームマネジメントでのPREP法活用
部下への指示や方針説明において、PREP法を使うことで指示の明確化と実行力向上を実現できます。
効果的な指示の出し方
- Point:今回の目標と期待する成果を明確に伝える
- Reason:なぜその作業が必要なのか、背景と意義を説明する
- Example:具体的な作業手順や成功事例を示す
- Point:再度目標を確認し、期待を明確にする
顧客対応でのPREP法応用
顧客への提案や問題解決において、PREP法により信頼獲得と成約率向上を図ることができます。
顧客提案での活用例
- 課題解決策を結論として最初に提示
- 提案の根拠となる分析結果を説明
- 他社での成功事例や具体的効果を紹介
- 提案内容の価値を再確認
社内プレゼンテーションでの戦略的活用
経営陣への提案や部門間調整において、PREP法により決裁確率を向上させることができます。
戦略的プレゼンのポイント
- 聞き手の関心事に合わせた結論設定
- データと実績に基づく理由づけ
- 競合他社との比較や業界動向の活用
- 明確な次のアクションの提示
まとめ:PREP法で相手に確実に伝わる説明力を身につけよう
PREP法は、ビジネスコミュニケーションにおいて確実に成果を上げることができる実践的な手法です。
結論→理由→具体例→結論という明確な構成により、聞き手にとって理解しやすく、記憶に残りやすい説明が可能になります。プレゼンテーション、会議での発言、上司への報告、顧客対応など、あらゆるビジネスシーンで活用できる汎用性の高さが最大の魅力です。
また、SDS法やDESC法といった他の説明手法との使い分けを理解することで、場面に応じて最適なコミュニケーション手法を選択できるようになります。論理的な説得にはPREP法を、網羅的な情報伝達にはSDS法を、人間関係を重視した対話にはDESC法を活用することで、コミュニケーション能力を総合的に向上させることができます。
重要なのは、PREP法を単なる説明技術として捉えるのではなく、相手との信頼関係構築と成果創出のためのコミュニケーション戦略として活用することです。継続的な練習により、論理的思考力と説得力を同時に向上させ、ビジネスパーソンとしての総合的な能力アップを実現しましょう。
今日からでも始められる練習方法を活用し、PREP法を自分のものにして、相手に確実に伝わる説明力を身につけてください。
PREP法に関するよくある質問(FAQ)
Q1. PREP法を使うと話が長くなってしまいませんか?
A: むしろ逆で、PREP法は話を簡潔にまとめる効果があります。最初に結論を述べることで、聞き手が話の方向性を理解し、必要以上に詳しい説明をする必要がなくなります。理由と具体例も要点を絞って伝えることで、全体として短時間で効果的な説明が可能になります。
Q2. 日本人には結論を最初に言う文化が馴染まないのでは?
A: 確かに日本語の伝統的な話法は起承転結型ですが、現代のビジネスシーンでは時間効率と明確性が重視されています。PREP法は相手の時間を尊重し、ストレスを軽減する手法として、多くの日本企業でも採用されています。慣れないうちは「結論から申し上げますと」などのクッション言葉を使うと自然に導入できます。
Q3. PREP法はどんな場面でも使えますか?
A: PREP法は論理的な説明に特化した手法のため、すべての場面に適しているわけではありません。感情に訴えかけたい場面、創作的な内容、複雑な技術説明などでは他の手法が適している場合があります。場面に応じてSDS法やDESC法との使い分けが重要です。
Q4. 具体例(Example)が思い浮かばない時はどうすればいいですか?
A: 具体例は必ずしも実体験である必要はありません。データ、統計、業界事例、仮定の状況なども有効です。また、「例えば〜のような場合」として想定される状況を示すことも可能です。重要なのは、理由を裏付ける根拠を示すことです。
Q5. PREP法を身につけるのにどのくらいの期間が必要ですか?
A: 個人差はありますが、意識的に練習すれば2-3週間で基本的な形は身につきます。日常会話で意識する、メールで実践する、1分間スピーチで練習するなど、継続的なトレーニングが効果的です。完全に自然に使えるようになるには2-3ヶ月程度の継続練習が目安です。
Q6. オンライン会議でもPREP法は有効ですか?
A: オンライン会議では特にPREP法が威力を発揮します。画面越しのコミュニケーションでは集中力が続きにくく、要点が伝わりにくい傾向があります。PREP法により最初に結論を示すことで、参加者の注意を引きつけ、短時間で効果的に意見を伝えることができます。
Q7. 部下への指導でPREP法を使う際の注意点はありますか?
A: 部下への指導では、DESC法の方が適している場合もあります。PREP法は論理的で効率的ですが、相手の感情や立場への配慮が不足する可能性があります。指導内容によっては、状況を客観的に描写し、感情に配慮するDESC法を選択することをお勧めします。
Q8. PREP法で失敗しやすいポイントは何ですか?
A: 最も多い失敗は、結論(Point)が曖昧になることです。「〜について話します」ではなく、明確な主張や提案を最初に述べることが重要です。また、理由と具体例が結論と論理的につながっていない場合も効果が半減します。各要素の関連性を意識して構成しましょう。
Q9. 英語でのプレゼンテーションでもPREP法は使えますか?
A: はい、PREP法は英語圏でも広く使われている手法です。むしろ英語でのビジネスコミュニケーションでは、直接的で明確な表現が好まれるため、PREP法は非常に効果的です。”Let me start with the conclusion”, “The reason is”, “For example”などの表現を使って構成できます。
Q10. PREP法を使っても相手に伝わらない場合はどうすればいいですか?
A: まず、相手の知識レベルや関心事を確認しましょう。専門用語の使いすぎ、前提知識の不足、相手のニーズとのミスマッチが原因の可能性があります。また、場面によってはSDS法やDESC法の方が適している場合もあります。相手の反応を見ながら柔軟に手法を使い分けることが大切です。