「優秀な人材を採用したのに期待した成果が出ない」「人事評価に不公平感がある」このような課題を抱えている企業は少なくありません。
近年、こうした問題を解決する手法として「コンピテンシー」が注目を集めています。
コンピテンシーとは、高い成果を出す人材に共通する行動特性のことで、採用面接や人事評価の精度向上に大きく貢献します。
本記事では、コンピテンシーとは何かという基本的な意味から、具体的な評価方法や面接での活用方法まで、初心者にも分かりやすく解説します。
目次
コンピテンシーとは何か?基本的な意味を簡単に解説
コンピテンシーとは、英語の「competency」に由来し、高いパフォーマンスを発揮する人材に共通して見られる行動特性を指します。
単純に「能力」や「スキル」とは異なり、成果を生み出すための思考パターンや価値観、行動の原動力となる要素を含んでいます。
コンピテンシーとは氷山モデルで理解する
コンピテンシーの理解には、よく「氷山モデル」が用いられます。
氷山の水面上に見える部分は、知識やスキル、経験など目に見える能力を表します。
一方、水面下の見えない部分が、価値観や動機、性格といったコンピテンシーに該当する要素です。
コンピテンシーとは歴史的にどう発展したか
コンピテンシーとは、1970年代にハーバード大学のマクレランド教授が提唱した概念です。
米国国務省の依頼で外交官の採用基準を調査した結果、学歴や知能テストの成績と実際の業績には相関がないことが判明しました。
その代わりに、高い成果を上げる職員には共通する行動特性があることが明らかになり、これがコンピテンシー理論の出発点となりました。
コンピテンシーとは評価でどう活用するのか
コンピテンシーとは人事評価において、従来の能力評価だけでは測れない要素を客観的に評価する手法として活用されています。
評価者の主観に左右されにくく、公平性の高い評価が可能になります。
コンピテンシーとは5段階のレベルで評価される
コンピテンシー評価では、行動特性を以下の5段階で分類します。
レベル1:受動行動
- 指示を受けて受け身的に行動する段階
- 主体性がなく場当たり的な対応
レベル2:通常行動
- マニュアル通りに業務を遂行する段階
- 決められたことを正確に実行
レベル3:能動・主体的行動
- 自ら判断して最適な選択ができる段階
- ルールの中で独自の工夫を実施
レベル4:創造・課題解決行動
- 問題解決のために効果的な工夫を加える段階
- PDCAサイクルを回しながら目標達成
レベル5:パラダイム転換行動
- 既成概念を打破し新しい状況を創造する段階
- 周囲からも賛同される斬新なアイディアを実現
コンピテンシーとは評価項目をどう設定するか
コンピテンシー評価の項目設定では、自社のハイパフォーマーを分析して共通する行動特性を抽出します。
分野 | 代表的な項目 | 概要 |
---|---|---|
達成・行動 | 達成思考、イニシアチブ | 目標達成への意欲と自発的行動 |
対人支援 | 対人理解、顧客支援志向 | 他者への理解と支援姿勢 |
影響力 | インパクト・影響力、関係構築 | 周囲への影響力と関係性構築 |
管理領域 | チームリーダーシップ、他者育成 | 管理職に求められる能力 |
部署や職種ごとに重要となるコンピテンシー項目は異なるため、詳細な分析が必要です。
コンピテンシーとは面接でどう使われるのか
コンピテンシーとは面接において、応募者の本質的な能力や適性を見極めるための強力なツールとして機能します。
従来の面接では測れない行動特性を評価することで、入社後の活躍可能性をより正確に判断できます。
コンピテンシーとは面接でどんな質問をするのか
コンピテンシー面接では、STARフレームワークを用いて構造化された質問を行います。
Situation(状況)
- 「過去1〜2年で最も力を入れて取り組んだ課題を教えてください」
- 「その時の具体的な状況や背景を詳しく説明してください」
Task(課題・目標)
- 「その課題において、あなたが設定した目標は何でしたか?」
- 「なぜその目標を設定したのか、理由を教えてください」
Action(行動)
- 「目標達成のために、具体的にどのような行動を取りましたか?」
- 「その行動を選択した理由や意図について説明してください」
Result(結果)
- 「その結果、どのような成果を得られましたか?」
- 「周囲にどのような影響を与えましたか?」
コンピテンシーとは面接評価をどう行うのか
コンピテンシー面接の評価では、応答内容を前述の5段階レベルに当てはめて客観的に判定します。
評価者による偏りを防ぐため、事前に評価基準を明確化し、複数の面接官による一貫した評価を実施します。
コンピテンシーとは面接でのメリット・デメリット
メリット
- 入社後の活躍可能性を高精度で予測
- 面接官による評価のばらつきを軽減
- 採用ミスマッチの大幅な減少
デメリット
- コンピテンシーモデルの作成に時間と労力が必要
- 面接官への十分な研修が必須
- 志望動機や人柄の評価が軽視される可能性
コンピテンシーとは具体的な活用事例
コンピテンシーとは実際のビジネス現場において、採用から人材育成まで幅広い領域で活用されています。
最新の調査データによると、コンピテンシーを導入した企業の約80%が採用精度の向上を実感しています。
コンピテンシーとは人材育成での活用方法
コンピテンシーは社員の成長促進において重要な指針となります。
- 目標設定の明確化: ハイパフォーマーの行動特性を参考に、具体的な成長目標を設定
- 研修プログラムの設計: コンピテンシーギャップに基づいた効果的な研修を企画
- キャリア開発支援: 個人の特性に応じた最適なキャリアパスを提示
コンピテンシーとは人材配置での効果
適材適所の人材配置において、コンピテンシーは科学的な根拠を提供します。
各部署で求められるコンピテンシーを明確化することで、社員の能力を最大限に活かせる配置が可能になります。
コンピテンシーとは導入する際の注意点
コンピテンシーとは導入に際して、いくつかの重要な注意点があります。
適切な準備と継続的な改善なしには、期待した効果を得ることができません。
コンピテンシーとは導入コストをどう考えるか
コンピテンシー導入には以下のコストが発生します。
- 初期費用: ハイパフォーマーの分析、モデル作成
- 運用費用: 評価シートの作成、面接官研修
- 維持費用: 定期的な見直し、アップデート
これらのコストに対して、採用精度向上や離職率減少による効果を総合的に評価する必要があります。
コンピテンシーとは継続的改善が必要な理由
ビジネス環境の変化に伴い、求められるコンピテンシーも変化します。
- 市場環境の変化への対応
- 事業戦略の転換に伴う要件変更
- 組織文化の進化への適応
定期的な見直しと改善により、コンピテンシーモデルの有効性を維持することが重要です。
まとめ
コンピテンシーとは、高い成果を出す人材に共通する行動特性を体系化した概念であり、現代の人事管理において欠かせないツールとなっています。
評価や面接での活用により、従来の手法では見極めが困難だった人材の本質的な能力を客観的に判断できます。
Google社の調査結果に見られるように、コンピテンシーを活用した構造化面接は入社後のパフォーマンス予測に高い効果を示しています。
導入には時間とコストを要しますが、採用精度の向上、評価の公平性確保、人材育成の効率化など、多方面にわたる効果が期待できます。
これからの人材戦略において、コンピテンシーの理解と活用は企業の競争力向上に直結する重要な要素といえるでしょう。
自社の成功する人材の特性を科学的に分析し、それを採用や育成に活かすことで、持続的な組織成長を実現できます。