パートナーとのスキンシップやセックスにおいて、「気持ちいいと思えない」「痛みや違和感ばかりがある」という悩みを抱えている方は少なくありません。周囲には相談しづらいため、一人で「自分は不感症なのではないか」と不安を感じたり、パートナーを傷つけないために「感じているフリ(演技)」をしてしまったりすることもあるでしょう。

セックスで快感を得られない原因は、決して「あなたの体が異常だから」という単純な理由だけではありません。身体的なメカニズム、精神的なストレス、そしてパートナーとのコミュニケーションや技術など、複数の要因が複雑に絡み合っているケースが大半です。

この記事では、セックスを感じない主な原因を身体・精神・環境の面から徹底的に分析し、今日から実践できる具体的な改善メソッドやトレーニング、そして考え方について解説します。原因を正しく理解し、焦らずに対策を行うことで、セックスの質は大きく変わる可能性があります。心と体の両方で満たされる関係性を築くための第一歩として、ぜひ参考にしてください。

目次

セックスを感じないのはなぜ?考えられる3つの主要原因を徹底分析

セックスで快感を得られない背景には、身体的要因、精神的要因、そして環境やパートナーとの要因が複雑に絡み合っています。これらは単独で起きている場合もあれば、複数が重なり合って感度を鈍らせている場合もあります。

例えば、過去の経験による精神的なブロックが身体の緊張を生み、それが痛みにつながっているケースもあれば、単に身体的な準備不足が原因であることもあります。まずは自分の状況がどれに当てはまるのか、あるいはどの組み合わせが影響しているのかを冷静に紐解いていくことが解決への近道です。ここでは、主要な3つの要因について詳しく解説していきます。

【身体的要因】ホルモンバランスの乱れや性交痛、濡れ不足

エストロゲンの減少や乾燥による痛みが快感を阻害する

女性の体は、女性ホルモン(エストロゲン)の働きによって膣内の潤いや弾力が保たれています。しかし、生理周期によるホルモンバランスの変動、ストレス、過度なダイエット、あるいは加齢などによってエストロゲンの分泌量が減少すると、膣内が乾燥しやすくなります(ドライバジャイナ)。

潤いが不足した状態で挿入を行うと、摩擦による強い痛みやヒリヒリとした不快感が生じます。痛みは快感の最大の敵であり、脳が「セックス=痛いもの」と認識してしまうと、防御反応としてさらに筋肉が収縮し、悪循環に陥ります。濡れにくい体質や一時的なコンディション不良は誰にでも起こりうることであり、決して珍しいことではありません。

骨盤底筋群の衰えによる膣圧低下と感度の関係

骨盤の底にあり、子宮や膀胱、直腸を支えている「骨盤底筋群」は、膣の締め付け(膣圧)にも深く関わっています。運動不足や長時間のデスクワーク、出産、加齢などによってこの筋肉が衰えると、膣の収縮力が低下する傾向にあります。

膣の締め付けが弱くなると、挿入時のペニスとの密着度が下がり、摩擦による物理的な刺激が伝わりにくくなります。その結果、「何か入っているのはわかるけれど、快感としての刺激が足りない」という状態になりがちです。また、骨盤底筋の衰えは血流の悪化も招くため、性器周辺の感度が全体的に鈍くなる一因とも考えられています。

神経系の伝達鈍化や疲労の蓄積

快感は、皮膚や粘膜への刺激が神経を通じて脳に伝わることで初めて認識されます。しかし、慢性的な睡眠不足や過度な疲労が蓄積していると、自律神経のバランスが乱れ、感覚の伝達がスムーズに行われないことがあります。

特に、仕事や家事で忙しく、体が常に「戦闘モード(交感神経優位)」になっていると、リラックスした状態(副交感神経優位)でなければ感じにくい性的興奮を得ることが難しくなります。体が疲れ切っている状態では、性的な刺激も単なる「接触」として処理されてしまい、脳が快感として受け取れない場合があるのです。

【精神的要因】「感じなければ」というプレッシャーとストレス

過去のトラウマや性に対する罪悪感(メンタルブロック)

過去に性的なことで嫌な思いをした経験や、厳格な家庭環境などで「性は恥ずかしいもの」「はしたないこと」といった刷り込みがある場合、無意識のうちにメンタルブロックが働いている可能性があります。

頭では「楽しみたい」と思っていても、深層心理で拒否反応や罪悪感が働くと、体は無意識に緊張して硬直します。この緊張状態では、血流が阻害され、感覚も鈍麻してしまいます。自分では気づきにくい深い部分での心理的なブレーキが、快感を得ることを妨げているケースは少なくありません。この場合、焦らず時間をかけて、性に対するポジティブなイメージを再構築していく必要があります。

パートナーへの気遣いが生む「演技」の悪循環

「彼を満足させたい」「不感症だと思われて嫌われたくない」という思いから、つい快感を得ているフリ(演技)をしてしまう方は多いです。しかし、演技をすることは、セックス中に「どのタイミングで声を出すか」「どう動けば喜ぶか」といった思考を巡らせることになり、自分の感覚に集中することを妨げます。

また、一度演技をしてしまうと、パートナーは「その方法で君は感じている」と誤解し、間違った刺激を繰り返すことになります。結果として、自分にとって本当に気持ちいいポイントが刺激されず、ますます感じなくなるという悪循環に陥ってしまいます。

日常生活のストレスや集中力の欠如

セックスは高い集中力を要する行為です。しかし、仕事の悩み、明日の予定、家事の段取りなど、頭の中が日常生活の心配事でいっぱいになっていると、目の前のパートナーや身体感覚に没入することができません。

これを「セックス中の心ここにあらず」の状態と呼びます。脳が他の情報を処理している間は、性器からの電気信号(刺激)が脳に届いても、快感として優先的に処理されにくくなります。リラックスできる環境を作り、日常のスイッチをオフにすることが、感度を取り戻すためには重要です。

【パートナー・環境要因】前戯不足や相性の不一致

濡れるまでの愛撫(前戯)にかける時間の不足

女性の体は、性的興奮を感じてから膣内が十分に潤い、膣が広がり(バルーニング現象)、受け入れ態勢が整うまでに、一般的に男性よりも時間がかかると言われています。この準備段階である「前戯(愛撫)」が不足したまま挿入に至ると、痛みを感じるだけでなく、クリトリスや膣周辺の充血が不十分なため、感度が低い状態で行為が終わってしまいます。

特に、クリトリスやその周辺組織は、時間をかけて愛撫されることで血流が集まり、膨張して敏感になります。このプロセスを飛ばしてしまうことは、セックスを感じない大きな原因の一つです。

性器のサイズや形状の不一致とフィット感の問題

体の相性として、性器のサイズや形状の不一致が原因となることもあります。例えば、パートナーのサイズに対して自分の膣が合っていない場合、逆に大きすぎて痛みが勝つ場合や、小さすぎて摩擦を感じにくい場合などがあります。

また、ペニスの反り具合や形状によって、当たる位置が変わります。自分の性感帯(Gスポットなど)にうまくヒットしない角度でピストン運動が行われても、快感は生まれにくいものです。これは「相性が悪い」と諦めるのではなく、体位や工夫によってフィットする角度を探すことで改善できる可能性が高い問題です。

ムードのない環境や義務的なセックスの繰り返し

セックスは身体的な行為であると同時に、情緒的な行為でもあります。部屋が散らかっている、照明が明るすぎる、テレビがついたまま、あるいは「子作りのため」「パートナーの処理のため」といった義務的なセックスになっている場合、脳が興奮モードに切り替わりません。

ムードや雰囲気は、女性の性欲や感度を高めるための重要なスイッチです。ロマンチックな雰囲気や、大切にされていると感じる言葉かけがない環境では、心が閉ざされてしまい、それに伴って体も反応しなくなってしまいます。

「どこが」感じない?部位別・状況別に見る感度の特徴と正体

一口に「感じない」と言っても、その症状は人によって様々です。「クリトリスは感じるけれど、挿入されると何も感じない」「全体的に感覚が鈍い」「昔は感じたのに今は感じない」など、状況によって原因や対策は異なります。

女性器の構造は複雑であり、場所によって神経の分布密度も異なります。ここでは、女性器の構造と神経の分布を正しく理解し、「なぜそこで感じないのか」「それは異常なのか」という疑問や誤解を解消していきます。

クリトリス(陰核)は感じるが膣内(挿入)を感じないケース

膣内の神経分布:GスポットとAスポットの真実

「クリトリスは敏感なのに、中に入れられるとただの摩擦運動にしか思えない」という悩みは非常に多く聞かれます。実は、これは身体構造的に珍しいことではありません。クリトリスには約8,000個以上の神経終末が集中していますが、膣内部の知覚神経は入り口付近に集中しており、奥に行けば行くほど神経は少なくなっています(これは出産の痛みに耐えるためとも言われています)。

ただし、膣内には「Gスポット(入り口から3〜5cmの腹側の壁)」や「Aスポット(さらに奥の子宮口付近)」と呼ばれる、神経が比較的集まっているとされる箇所があります。これらは点ではなくゾーンであり、個人差も大きいため、適切な刺激を受けないと開発されにくい場所でもあります。

膣の入り口と奥で異なる感覚の違い

前述の通り、膣の入り口(膣口)付近は神経が過敏で、痛みや快感を感じやすいエリアです。一方で、膣の奥(円蓋部など)は、物理的な接触感覚よりも、圧迫感や充満感として刺激を感じることが多いと言われています。

そのため、クリトリスへの刺激のような「鋭い快感」を膣内(挿入)にも求めていると、「感じない」と判断してしまいがちです。膣内での快感は、包み込むような感覚や、お腹の奥に響くような重厚な感覚であることが多く、クリトリスとは快感の種類が異なることを理解しておくことが大切です。

全く何も感じない「不感症(冷感症)」とは何か

医学的な定義としての「女性性機能障害(FSD)」

一般的に使われる「不感症」という言葉ですが、医学的には「女性性機能障害(FSD:Female Sexual Dysfunction)」というカテゴリーに含まれる症状の一部を指すことが多いです。これには、性欲がわかない、濡れない、オーガズムに達しない、性交痛がある、といった様々な症状が含まれます。

しかし、「全く何も感じない」というケースでも、神経系統に器質的な異常があることは稀です。多くの場合、心理的な抑制や、適切な刺激を知らないことによる「未開発」の状態であることが大半です。

実際に治療が必要なケースと、単なる開発不足の違い

本当に治療が必要なレベルの機能障害は、糖尿病による神経障害や、骨盤内の手術の後遺症、ホルモン分泌の著しい異常などが背景にある場合です。

一方で、身体的な疾患がないにもかかわらず感じない場合は、「自分の性感帯を知らない」「パートナーの刺激方法が合っていない」「緊張して感覚を遮断している」といった理由によるものがほとんどです。これらは病気ではなく、いわば「練習不足」や「コミュニケーション不足」の状態と言えるため、適切なアプローチで感覚を育てていくことが可能です。

出産後や加齢に伴って急に感じなくなったケース

産後の膣の緩みやホルモン変化の影響

出産、特に経膣分娩(自然分娩)を経験すると、膣周辺の筋肉や組織が大きく引き伸ばされます。産後の回復には個人差がありますが、骨盤底筋がダメージを受けた状態のままだと、膣の締まりが悪くなり、パートナーとの密着感が薄れて「スカスカする」「感じない」という状態になることがあります。

また、授乳中はプロラクチンというホルモンの影響でエストロゲンが抑制されるため、膣が乾燥しやすく、性欲自体も減退しやすい時期です。これは体が育児に専念するための自然なメカニズムであり、時期が過ぎれば回復することが一般的です。

更年期障害による濡れにくさと感度低下

閉経前後の更年期(一般的に45歳〜55歳頃)に入ると、卵巣機能の低下によりエストロゲンが激減します。これにより、膣壁が薄くなり、潤滑液の分泌量が著しく減少します(萎縮性膣炎など)。

この時期は、「感じない」以前に「痛い」という悩みが先行しやすくなります。痛みを我慢して行為を続けると、さらに感覚が麻痺してしまうため、ホルモン補充療法(HRT)や保湿剤の活用など、年齢に合わせたケアが必要になります。

セックスを感じる身体を作る!今すぐ始められる具体的な改善メソッド

原因が整理できたところで、ここからは実践的な改善策について解説します。身体の感度は、トレーニングや適切なケアによって「育てる」ことができます。パートナーに頼るだけでなく、まずは自分でできることから始めて、感度のベースアップを図りましょう。

感度を高めるための「骨盤底筋トレーニング」の実践

膣を締める力を養い、摩擦と快感を増やす方法

膣の感覚を鋭くするために最も効果的とされるのが「骨盤底筋トレーニング(ケーゲル体操)」です。膣や肛門周りの筋肉を鍛えることで、膣内の血流が促進され、神経伝達がスムーズになります。また、自力で膣を締める力がつけば、挿入時にパートナーを締め付けることができ、摩擦が増えて双方の快感が高まります。

  • 基本の動き: 肛門と膣を、体の中に吸い上げるようなイメージで5秒間ギュッと力を入れて締め、その後ゆっくり5秒かけて緩めます。これを1セット10回程度繰り返します。
  • ポイント: お腹や太ももに力を入れず、股間の筋肉だけを動かすように意識します。

日常生活でできる「ながら」トレーニングのやり方

骨盤底筋トレーニングの最大のメリットは、特別な器具が不要で、誰にも気づかれずにどこでもできることです。

  • デスクワーク中に座りながら
  • 通勤電車のつり革につかまりながら
  • キッチンで料理をしながら
  • お風呂に入っている時に

このように、日常の動作とセットにして習慣化することが大切です。継続することで、数週間から数ヶ月で「膣の感覚が変わった」「濡れやすくなった」という変化を実感する方が多いトレーニングです。

潤滑不足を解消するローション(潤滑ゼリー)の正しい選び方

痛みを快感に変えるための粘度と成分の選び方

濡れ不足による痛みや摩擦感がある場合は、迷わず潤滑ゼリー(ローション)を使用しましょう。痛みを取り除くだけで、感覚は劇的に変わります。

  • 水溶性: 最も一般的で、洗い流しやすいのが特徴。コンドームとの併用も安心です。自然な潤いに近いため、初心者におすすめです。
  • シリコン系: 乾きにくく、滑りが長持ちします。お風呂での使用にも適していますが、しっかりと洗い流す必要があります。

成分としては、ヒアルロン酸やコラーゲンなど保湿成分が配合されたものを選ぶと、デリケートゾーンへの負担が少なくなります。

恥ずかしがらずにアイテムを導入するメリット

「ローションを使うなんて、不感症みたいで恥ずかしい」と感じる方もいるかもしれませんが、それは誤解です。プロの現場や性生活が充実しているカップルほど、潤滑剤を積極的に活用しています。

潤滑剤を使うことで、スムーズなピストン運動が可能になり、デリケートな粘膜を守りながら、純粋な「気持ちよさ」に集中できる環境が整います。パートナーと一緒に選ぶなどして、ポジティブなアイテムとして導入してみましょう。

自分の「イキやすいポイント」を知るセルフプレジャーの重要性

パートナー任せにせず自分の性感帯を開発する

自分の体がどこをどう触られたら気持ちいいのか、自分自身が理解していない状態で、パートナーにそれを求めるのは難しいことです。セルフプレジャー(自慰)は、自分の快感を探求するための大切な時間です。

クリトリスへの刺激の強弱、リズム、あるいは膣内のどの部分に反応があるかなど、誰にも気兼ねなく試すことができます。自分で気持ちいいポイント(性感帯)を見つけられれば、それをパートナーに伝えることで、セックスの質を向上させることができます。

鏡を使って自分の性器構造を理解する

自分の性器をまじまじと見たことがないという女性は意外と多いものです。手鏡を使って、自分のデリケートゾーンを観察してみましょう。

クリトリスの位置や包皮の状態、膣の入り口の場所などを視覚的に確認することで、脳内のボディイメージと実際の感覚がリンクしやすくなります。「ここがこうなっているから、ここを触ると感じるんだ」という理解が進むと、感度が高まる効果が期待できます。

快感を引き出すセックスのテクニックと体位の工夫

体の準備が整ったら、実際の行為におけるテクニックや工夫を見直してみましょう。同じ行為でも、角度やリズム、意識を変えるだけで、感覚は驚くほど変化します。

挿入前の「前戯」で脳と身体を十分に興奮させるコツ

クリトリスだけでなく全身の性感帯を愛撫する意味

前戯において、いきなり性器を触るのではなく、まずは全身を愛撫することが重要です。耳、首筋、胸、背中、太ももの内側など、性器以外の部分を優しく触れられることで、脳が「愛されている」「安心できる」と感じ、オキシトシン(愛情ホルモン)が分泌されます。

全身の皮膚感覚を呼び覚ましてから、徐々に性器周辺へとアプローチすることで、骨盤内への血流が集まりやすくなり、膣の潤いや感度を高める準備が整います。

「焦らし」を取り入れて血流を骨盤に集める

早く挿入したい、早く終わらせたいと焦るのではなく、あえて「焦らす」ことも有効なテクニックです。クリトリスを執拗に攻めるのではなく、触れそうで触れない距離感を保ったり、強弱をつけたりすることで、性的欲求が高まります。

「もっと触ってほしい」という欲求が高まった状態で刺激を受けると、脳はそれを強い快感として処理します。十分な興奮状態(プラトー期)まで高めてから挿入に移行することが、膣内快感を得るための鍵となります。

密着度を高めて刺激を増やすおすすめの体位

結合部の密着度が高い「正常位」の角度調整(CATなど)

基本の正常位でも、工夫次第で感度は変わります。おすすめなのは、骨盤の下にクッションや枕を敷いて腰を高くする方法です。これにより、挿入角度が変わり、Gスポットなどの膣壁上部を刺激しやすくなります。

また、「CAT(Coital Alignment Technique)」と呼ばれる、結合部をすり合わせるような密着度の高い正常位も有効です。ピストン運動よりも、クリトリスへの圧迫と結合部の密着を重視する動きで、女性が快感を得やすいと言われています。

女性自身が深さとリズムを調整できる「騎乗位」

女性が上になる騎乗位は、挿入の深さや角度、リズムを自分でコントロールできるため、自分が気持ちいいポイントを探りやすい体位です。

パートナーに動いてもらう受け身の状態ではなく、自分で腰を動かしてクリトリスを彼の恥骨に押し当てたり、Gスポットに当たる角度を探したりすることができます。視覚的にも興奮しやすく、主体的に楽しむことで感度が上がりやすいメリットがあります。

Gスポットを刺激しやすい「後背位」とその注意点

後ろから挿入する後背位は、ペニスが深く入りやすく、膣の前壁にあるGスポットを刺激しやすい体位として知られています。

ただし、奥まで入りすぎることで子宮口を突いてしまい、痛みを感じる場合もあります。その場合は、上半身をベッドに伏せるように低くしたり、パートナーに深さを調整してもらったりして、痛みのない「気持ちいい深さ」を見つけることが大切です。

コミュニケーションを変える:パートナーへの伝え方

演技をやめて「ここが気持ちいい」を具体的に伝える

勇気がいりますが、まずは「演技」をやめることがスタート地点です。そして、何が気持ちよくて、何が痛いのかをパートナーに伝えましょう。

「もっとゆっくりして」「そこは痛い」といった否定的な言葉よりも、「もっと優しく触ってくれると嬉しい」「ここを触られると気持ちいい」と、自分の快感をガイドするように伝えると、パートナーも受け入れやすくなります。

批判ではなく「リクエスト」として提案する会話術

セックスの不満を伝える時は、パートナーの人格や技術を否定しないように注意が必要です。「あなたは下手」と言うのではなく、「私たちはもっと良くなれる」「こういうことを試してみたい」という、二人の関係を良くするための「リクエスト」として提案しましょう。

「最近、少し濡れにくいからローションを使ってみたい」「今日は前戯を長くしてほしい」など、具体的な要望を伝えることで、パートナーもどうすればいいかが明確になり、協力してくれやすくなります。

男性パートナーができることは?彼氏・夫へのアドバイス

もし、この記事をパートナーの男性が読んでいる場合、あるいは女性から男性へアドバイスしたい場合のために、男性側ができるサポートについて触れておきます。女性が「感じない」と悩んでいる時、男性の協力は不可欠です。

ピストン運動よりも「愛撫」と「雰囲気」を最優先にする

多くの男性は挿入後のピストン運動を重視しがちですが、女性の快感のピークや高まり方は男性とは異なります。挿入に至るまでの「雰囲気作り」や「丁寧な愛撫」にこそ、時間と労力を割いてください。女性が十分に濡れ、目がとろんとするなどの興奮サインが出るまでは、挿入を急がない余裕を持つことが、結果としてパートナーを満足させることにつながります。

「イカせよう」と必死になりすぎない余裕を持つ

「俺がイカせてやる」と必死になりすぎると、そのプレッシャーが女性に伝わり、逆に女性を萎縮させてしまいます。「イカなければならない」というゴールを設定するのではなく、「二人の触れ合いを楽しむ」というプロセスを重視してください。男性側のリラックスした余裕が、女性の安心感と感度を引き出します。

アフターケア(後戯)で安心感と信頼関係を深める

行為が終わった後、すぐに背を向けて寝てしまったりスマホを見たりしていませんか? 女性はセックス後の余韻(後戯)で愛されているかを確認します。ハグをしたり、キスをしたり、感謝の言葉を伝えたりすることで、女性の心は満たされます。この精神的な充足感が、次回のセックスへの期待感やリラックス効果を生み、良い循環を作ります。

もしかして病気?医療機関を受診すべき症状とタイミング

セルフケアや工夫を試しても改善が見られない場合、あるいは強い痛みを伴う場合は、背景に疾患が隠れている可能性があります。我慢せず、専門医に相談することも重要な選択肢です。

性交痛が激しい場合に疑われる子宮内膜症や炎症

挿入時に激痛が走る、奥を突かれると痛いといった症状が続く場合、子宮内膜症、子宮筋腫、膣炎、性感染症などの疾患が原因である可能性があります。これらは放置すると不妊の原因にもなり得るため、早めに婦人科を受診し、検査を受けることをおすすめします。痛みの原因が治療されれば、自然とセックスも楽しめるようになります。

抗うつ剤やピルなど服用薬の副作用による性欲減退

現在服用している薬の影響で、性欲減退や感度の低下、濡れにくさが起きている場合があります。特にSSRI(抗うつ薬)や一部の低用量ピルなどは、副作用として性機能に影響を与えることが報告されています。心当たりがある場合は、主治医に相談し、薬の変更や用量の調整が可能か確認してみてください。

セックスカウンセリングや専門外来の活用

身体的な異常がないにもかかわらず、強い苦痛や嫌悪感がある場合は、心因性の要因が強いかもしれません。最近では、性機能障害(FSD)を専門に扱う「女性外来」や、カップルで受けられる「セックスカウンセリング」を行っている医療機関も増えています。プロのカウンセラーや医師に相談することで、絡まった糸が解けるように解決策が見つかることもあります。

セックスを感じない悩みに関するFAQ(よくある質問)

最後に、セックスで感じないことに悩む読者から頻繁に寄せられる質問に対して、Q&A形式でお答えします。

Q. 初めてのセックスで全く感じなかったのですが異常ですか?

A. 全く異常ではありません。
初体験は緊張や不安が強く、痛みを感じることが多いため、快感を得られないのがむしろ普通です。回数を重ね、慣れてリラックスできるようになると、徐々に感覚が変わってくることがほとんどです。

Q. 濡れているのに感じないのはなぜですか?

A. 「濡れる=感じる」とは限りません。
生理的な反応として分泌液が出ることはありますが、神経が興奮していなければ快感にはつながりません。また、濡れすぎて摩擦が減っている可能性もあります。精神的に興奮できているか、適切な刺激があるかを見直してみましょう。

Q. コンドームをつけると彼氏も私も感じにくくなります。対策は?

A. 薄型の製品や潤滑剤を試してみましょう。
ゴムの厚みで体温や感触が伝わりにくくなることがあります。0.01mmなどの極薄タイプに変える、コンドームの上から潤滑ゼリーを足して密着度を上げるなどの工夫で改善されることが多いです。

Q. マグロ(無反応)だと思われないための最低限の反応は?

A. 吐息やハグだけでも十分伝わります。
無理に声を出す必要はありません。気持ちいいと感じた時に少し吐息を漏らす、パートナーの背中に手を回して抱きしめる、目を見つめるだけでも反応は伝わります。小さな反応を返すことから始めてみてください。

Q. バイブなどのグッズを使いすぎると感度が落ちますか?

A. 一時的に鈍くなることはありますが、永続的ではありません。
強力な振動刺激に慣れすぎると、生身の刺激が物足りなく感じることがあります(いわゆる遅漏や不感の状態)。しかし、使用を控えれば感覚は元に戻ります。グッズはスパイスとして適度に取り入れるのがおすすめです。

まとめ:焦らず自分のペースで「セックスを感じない」を解消しよう

セックスを感じないことには、必ず何らかの理由があります。それはあなたの身体的な欠陥ではなく、ホルモンバランス、筋肉の衰え、精神的なブロック、あるいは単なる経験不足やパートナーとのすれ違いかもしれません。

重要なのは、「自分はダメだ」と責めないことです。骨盤底筋を鍛える、ローションを使う、自分の体を知る、パートナーと話し合うなど、できることから一つずつ試してみてください。身体の感覚は、年齢に関係なく開発し、育てていくことができます。
焦らず、自分のペースで、心と体が本当に心地よいと感じられるセックスを探求していきましょう。

パートナーとのスキンシップやセックスにおいて、「気持ちいいと思えない」「痛みや違和感ばかりがある」という悩みを抱えている方は少なくありません。周囲には相談しづらいため、一人で「自分は不感症なのではないか」と不安を感じたり、パートナーを傷つけないために「感じているフリ(演技)」をしてしまったりすることもあるでしょう。

セックスで快感を得られない原因は、決して「あなたの体が異常だから」という単純な理由だけではありません。身体的なメカニズム、精神的なストレス、そしてパートナーとのコミュニケーションや技術など、複数の要因が複雑に絡み合っているケースが大半です。

この記事では、セックスを感じない主な原因を身体・精神・環境の面から徹底的に分析し、今日から実践できる具体的な改善メソッドやトレーニング、そして考え方について解説します。原因を正しく理解し、焦らずに対策を行うことで、セックスの質は大きく変わる可能性があります。心と体の両方で満たされる関係性を築くための第一歩として、ぜひ参考にしてください。

セックスを感じないのはなぜ?考えられる3つの主要原因を徹底分析

セックスで快感を得られない背景には、身体的要因、精神的要因、そして環境やパートナーとの要因が複雑に絡み合っています。これらは単独で起きている場合もあれば、複数が重なり合って感度を鈍らせている場合もあります。

例えば、過去の経験による精神的なブロックが身体の緊張を生み、それが痛みにつながっているケースもあれば、単に身体的な準備不足が原因であることもあります。まずは自分の状況がどれに当てはまるのか、あるいはどの組み合わせが影響しているのかを冷静に紐解いていくことが解決への近道です。ここでは、主要な3つの要因について詳しく解説していきます。

【身体的要因】ホルモンバランスの乱れや性交痛、濡れ不足

エストロゲンの減少や乾燥による痛みが快感を阻害する

女性の体は、女性ホルモン(エストロゲン)の働きによって膣内の潤いや弾力が保たれています。しかし、生理周期によるホルモンバランスの変動、ストレス、過度なダイエット、あるいは加齢などによってエストロゲンの分泌量が減少すると、膣内が乾燥しやすくなります(ドライバジャイナ)。

潤いが不足した状態で挿入を行うと、摩擦による強い痛みやヒリヒリとした不快感が生じます。痛みは快感の最大の敵であり、脳が「セックス=痛いもの」と認識してしまうと、防御反応としてさらに筋肉が収縮し、悪循環に陥ります。濡れにくい体質や一時的なコンディション不良は誰にでも起こりうることであり、決して珍しいことではありません。

骨盤底筋群の衰えによる膣圧低下と感度の関係

骨盤の底にあり、子宮や膀胱、直腸を支えている「骨盤底筋群」は、膣の締め付け(膣圧)にも深く関わっています。運動不足や長時間のデスクワーク、出産、加齢などによってこの筋肉が衰えると、膣の収縮力が低下する傾向にあります。

膣の締め付けが弱くなると、挿入時のペニスとの密着度が下がり、摩擦による物理的な刺激が伝わりにくくなります。その結果、「何か入っているのはわかるけれど、快感としての刺激が足りない」という状態になりがちです。また、骨盤底筋の衰えは血流の悪化も招くため、性器周辺の感度が全体的に鈍くなる一因とも考えられています。

神経系の伝達鈍化や疲労の蓄積

快感は、皮膚や粘膜への刺激が神経を通じて脳に伝わることで初めて認識されます。しかし、慢性的な睡眠不足や過度な疲労が蓄積していると、自律神経のバランスが乱れ、感覚の伝達がスムーズに行われないことがあります。

特に、仕事や家事で忙しく、体が常に「戦闘モード(交感神経優位)」になっていると、リラックスした状態(副交感神経優位)でなければ感じにくい性的興奮を得ることが難しくなります。体が疲れ切っている状態では、性的な刺激も単なる「接触」として処理されてしまい、脳が快感として受け取れない場合があるのです。

【精神的要因】「感じなければ」というプレッシャーとストレス

過去のトラウマや性に対する罪悪感(メンタルブロック)

過去に性的なことで嫌な思いをした経験や、厳格な家庭環境などで「性は恥ずかしいもの」「はしたないこと」といった刷り込みがある場合、無意識のうちにメンタルブロックが働いている可能性があります。

頭では「楽しみたい」と思っていても、深層心理で拒否反応や罪悪感が働くと、体は無意識に緊張して硬直します。この緊張状態では、血流が阻害され、感覚も鈍麻してしまいます。自分では気づきにくい深い部分での心理的なブレーキが、快感を得ることを妨げているケースは少なくありません。この場合、焦らず時間をかけて、性に対するポジティブなイメージを再構築していく必要があります。

パートナーへの気遣いが生む「演技」の悪循環

「彼を満足させたい」「不感症だと思われて嫌われたくない」という思いから、つい快感を得ているフリ(演技)をしてしまう方は多いです。しかし、演技をすることは、セックス中に「どのタイミングで声を出すか」「どう動けば喜ぶか」といった思考を巡らせることになり、自分の感覚に集中することを妨げます。

また、一度演技をしてしまうと、パートナーは「その方法で君は感じている」と誤解し、間違った刺激を繰り返すことになります。結果として、自分にとって本当に気持ちいいポイントが刺激されず、ますます感じなくなるという悪循環に陥ってしまいます。

日常生活のストレスや集中力の欠如

セックスは高い集中力を要する行為です。しかし、仕事の悩み、明日の予定、家事の段取りなど、頭の中が日常生活の心配事でいっぱいになっていると、目の前のパートナーや身体感覚に没入することができません。

これを「セックス中の心ここにあらず」の状態と呼びます。脳が他の情報を処理している間は、性器からの電気信号(刺激)が脳に届いても、快感として優先的に処理されにくくなります。リラックスできる環境を作り、日常のスイッチをオフにすることが、感度を取り戻すためには重要です。

【パートナー・環境要因】前戯不足や相性の不一致

濡れるまでの愛撫(前戯)にかける時間の不足

女性の体は、性的興奮を感じてから膣内が十分に潤い、膣が広がり(バルーニング現象)、受け入れ態勢が整うまでに、一般的に男性よりも時間がかかると言われています。この準備段階である「前戯(愛撫)」が不足したまま挿入に至ると、痛みを感じるだけでなく、クリトリスや膣周辺の充血が不十分なため、感度が低い状態で行為が終わってしまいます。

特に、クリトリスやその周辺組織は、時間をかけて愛撫されることで血流が集まり、膨張して敏感になります。このプロセスを飛ばしてしまうことは、セックスを感じない大きな原因の一つです。

性器のサイズや形状の不一致とフィット感の問題

体の相性として、性器のサイズや形状の不一致が原因となることもあります。例えば、パートナーのサイズに対して自分の膣が合っていない場合、逆に大きすぎて痛みが勝つ場合や、小さすぎて摩擦を感じにくい場合などがあります。

また、ペニスの反り具合や形状によって、当たる位置が変わります。自分の性感帯(Gスポットなど)にうまくヒットしない角度でピストン運動が行われても、快感は生まれにくいものです。これは「相性が悪い」と諦めるのではなく、体位や工夫によってフィットする角度を探すことで改善できる可能性が高い問題です。

ムードのない環境や義務的なセックスの繰り返し

セックスは身体的な行為であると同時に、情緒的な行為でもあります。部屋が散らかっている、照明が明るすぎる、テレビがついたまま、あるいは「子作りのため」「パートナーの処理のため」といった義務的なセックスになっている場合、脳が興奮モードに切り替わりません。

ムードや雰囲気は、女性の性欲や感度を高めるための重要なスイッチです。ロマンチックな雰囲気や、大切にされていると感じる言葉かけがない環境では、心が閉ざされてしまい、それに伴って体も反応しなくなってしまいます。

「どこが」感じない?部位別・状況別に見る感度の特徴と正体

一口に「感じない」と言っても、その症状は人によって様々です。「クリトリスは感じるけれど、挿入されると何も感じない」「全体的に感覚が鈍い」「昔は感じたのに今は感じない」など、状況によって原因や対策は異なります。

女性器の構造は複雑であり、場所によって神経の分布密度も異なります。ここでは、女性器の構造と神経の分布を正しく理解し、「なぜそこで感じないのか」「それは異常なのか」という疑問や誤解を解消していきます。

クリトリス(陰核)は感じるが膣内(挿入)を感じないケース

膣内の神経分布:GスポットとAスポットの真実

「クリトリスは敏感なのに、中に入れられるとただの摩擦運動にしか思えない」という悩みは非常に多く聞かれます。実は、これは身体構造的に珍しいことではありません。クリトリスには約8,000個以上の神経終末が集中していますが、膣内部の知覚神経は入り口付近に集中しており、奥に行けば行くほど神経は少なくなっています(これは出産の痛みに耐えるためとも言われています)。

ただし、膣内には「Gスポット(入り口から3〜5cmの腹側の壁)」や「Aスポット(さらに奥の子宮口付近)」と呼ばれる、神経が比較的集まっているとされる箇所があります。これらは点ではなくゾーンであり、個人差も大きいため、適切な刺激を受けないと開発されにくい場所でもあります。

膣の入り口と奥で異なる感覚の違い

前述の通り、膣の入り口(膣口)付近は神経が過敏で、痛みや快感を感じやすいエリアです。一方で、膣の奥(円蓋部など)は、物理的な接触感覚よりも、圧迫感や充満感として刺激を感じることが多いと言われています。

そのため、クリトリスへの刺激のような「鋭い快感」を膣内(挿入)にも求めていると、「感じない」と判断してしまいがちです。膣内での快感は、包み込むような感覚や、お腹の奥に響くような重厚な感覚であることが多く、クリトリスとは快感の種類が異なることを理解しておくことが大切です。

全く何も感じない「不感症(冷感症)」とは何か

医学的な定義としての「女性性機能障害(FSD)」

一般的に使われる「不感症」という言葉ですが、医学的には「女性性機能障害(FSD:Female Sexual Dysfunction)」というカテゴリーに含まれる症状の一部を指すことが多いです。これには、性欲がわかない、濡れない、オーガズムに達しない、性交痛がある、といった様々な症状が含まれます。

しかし、「全く何も感じない」というケースでも、神経系統に器質的な異常があることは稀です。多くの場合、心理的な抑制や、適切な刺激を知らないことによる「未開発」の状態であることが大半です。

実際に治療が必要なケースと、単なる開発不足の違い

本当に治療が必要なレベルの機能障害は、糖尿病による神経障害や、骨盤内の手術の後遺症、ホルモン分泌の著しい異常などが背景にある場合です。

一方で、身体的な疾患がないにもかかわらず感じない場合は、「自分の性感帯を知らない」「パートナーの刺激方法が合っていない」「緊張して感覚を遮断している」といった理由によるものがほとんどです。これらは病気ではなく、いわば「練習不足」や「コミュニケーション不足」の状態と言えるため、適切なアプローチで感覚を育てていくことが可能です。

出産後や加齢に伴って急に感じなくなったケース

産後の膣の緩みやホルモン変化の影響

出産、特に経膣分娩(自然分娩)を経験すると、膣周辺の筋肉や組織が大きく引き伸ばされます。産後の回復には個人差がありますが、骨盤底筋がダメージを受けた状態のままだと、膣の締まりが悪くなり、パートナーとの密着感が薄れて「スカスカする」「感じない」という状態になることがあります。

また、授乳中はプロラクチンというホルモンの影響でエストロゲンが抑制されるため、膣が乾燥しやすく、性欲自体も減退しやすい時期です。これは体が育児に専念するための自然なメカニズムであり、時期が過ぎれば回復することが一般的です。

更年期障害による濡れにくさと感度低下

閉経前後の更年期(一般的に45歳〜55歳頃)に入ると、卵巣機能の低下によりエストロゲンが激減します。これにより、膣壁が薄くなり、潤滑液の分泌量が著しく減少します(萎縮性膣炎など)。

この時期は、「感じない」以前に「痛い」という悩みが先行しやすくなります。痛みを我慢して行為を続けると、さらに感覚が麻痺してしまうため、ホルモン補充療法(HRT)や保湿剤の活用など、年齢に合わせたケアが必要になります。

セックスを感じる身体を作る!今すぐ始められる具体的な改善メソッド

原因が整理できたところで、ここからは実践的な改善策について解説します。身体の感度は、トレーニングや適切なケアによって「育てる」ことができます。パートナーに頼るだけでなく、まずは自分でできることから始めて、感度のベースアップを図りましょう。

感度を高めるための「骨盤底筋トレーニング」の実践

膣を締める力を養い、摩擦と快感を増やす方法

膣の感覚を鋭くするために最も効果的とされるのが「骨盤底筋トレーニング(ケーゲル体操)」です。膣や肛門周りの筋肉を鍛えることで、膣内の血流が促進され、神経伝達がスムーズになります。また、自力で膣を締める力がつけば、挿入時にパートナーを締め付けることができ、摩擦が増えて双方の快感が高まります。

  • 基本の動き: 肛門と膣を、体の中に吸い上げるようなイメージで5秒間ギュッと力を入れて締め、その後ゆっくり5秒かけて緩めます。これを1セット10回程度繰り返します。
  • ポイント: お腹や太ももに力を入れず、股間の筋肉だけを動かすように意識します。

日常生活でできる「ながら」トレーニングのやり方

骨盤底筋トレーニングの最大のメリットは、特別な器具が不要で、誰にも気づかれずにどこでもできることです。

  • デスクワーク中に座りながら
  • 通勤電車のつり革につかまりながら
  • キッチンで料理をしながら
  • お風呂に入っている時に

このように、日常の動作とセットにして習慣化することが大切です。継続することで、数週間から数ヶ月で「膣の感覚が変わった」「濡れやすくなった」という変化を実感する方が多いトレーニングです。

潤滑不足を解消するローション(潤滑ゼリー)の正しい選び方

痛みを快感に変えるための粘度と成分の選び方

濡れ不足による痛みや摩擦感がある場合は、迷わず潤滑ゼリー(ローション)を使用しましょう。痛みを取り除くだけで、感覚は劇的に変わります。

  • 水溶性: 最も一般的で、洗い流しやすいのが特徴。コンドームとの併用も安心です。自然な潤いに近いため、初心者におすすめです。
  • シリコン系: 乾きにくく、滑りが長持ちします。お風呂での使用にも適していますが、しっかりと洗い流す必要があります。

成分としては、ヒアルロン酸やコラーゲンなど保湿成分が配合されたものを選ぶと、デリケートゾーンへの負担が少なくなります。

恥ずかしがらずにアイテムを導入するメリット

「ローションを使うなんて、不感症みたいで恥ずかしい」と感じる方もいるかもしれませんが、それは誤解です。プロの現場や性生活が充実しているカップルほど、潤滑剤を積極的に活用しています。

潤滑剤を使うことで、スムーズなピストン運動が可能になり、デリケートな粘膜を守りながら、純粋な「気持ちよさ」に集中できる環境が整います。パートナーと一緒に選ぶなどして、ポジティブなアイテムとして導入してみましょう。

自分の「イキやすいポイント」を知るセルフプレジャーの重要性

パートナー任せにせず自分の性感帯を開発する

自分の体がどこをどう触られたら気持ちいいのか、自分自身が理解していない状態で、パートナーにそれを求めるのは難しいことです。セルフプレジャー(自慰)は、自分の快感を探求するための大切な時間です。

クリトリスへの刺激の強弱、リズム、あるいは膣内のどの部分に反応があるかなど、誰にも気兼ねなく試すことができます。自分で気持ちいいポイント(性感帯)を見つけられれば、それをパートナーに伝えることで、セックスの質を向上させることができます。

鏡を使って自分の性器構造を理解する

自分の性器をまじまじと見たことがないという女性は意外と多いものです。手鏡を使って、自分のデリケートゾーンを観察してみましょう。

クリトリスの位置や包皮の状態、膣の入り口の場所などを視覚的に確認することで、脳内のボディイメージと実際の感覚がリンクしやすくなります。「ここがこうなっているから、ここを触ると感じるんだ」という理解が進むと、感度が高まる効果が期待できます。

快感を引き出すセックスのテクニックと体位の工夫

体の準備が整ったら、実際の行為におけるテクニックや工夫を見直してみましょう。同じ行為でも、角度やリズム、意識を変えるだけで、感覚は驚くほど変化します。

挿入前の「前戯」で脳と身体を十分に興奮させるコツ

クリトリスだけでなく全身の性感帯を愛撫する意味

前戯において、いきなり性器を触るのではなく、まずは全身を愛撫することが重要です。耳、首筋、胸、背中、太ももの内側など、性器以外の部分を優しく触れられることで、脳が「愛されている」「安心できる」と感じ、オキシトシン(愛情ホルモン)が分泌されます。

全身の皮膚感覚を呼び覚ましてから、徐々に性器周辺へとアプローチすることで、骨盤内への血流が集まりやすくなり、膣の潤いや感度を高める準備が整います。

「焦らし」を取り入れて血流を骨盤に集める

早く挿入したい、早く終わらせたいと焦るのではなく、あえて「焦らす」ことも有効なテクニックです。クリトリスを執拗に攻めるのではなく、触れそうで触れない距離感を保ったり、強弱をつけたりすることで、性的欲求が高まります。

「もっと触ってほしい」という欲求が高まった状態で刺激を受けると、脳はそれを強い快感として処理します。十分な興奮状態(プラトー期)まで高めてから挿入に移行することが、膣内快感を得るための鍵となります。

密着度を高めて刺激を増やすおすすめの体位

結合部の密着度が高い「正常位」の角度調整(CATなど)

基本の正常位でも、工夫次第で感度は変わります。おすすめなのは、骨盤の下にクッションや枕を敷いて腰を高くする方法です。これにより、挿入角度が変わり、Gスポットなどの膣壁上部を刺激しやすくなります。

また、「CAT(Coital Alignment Technique)」と呼ばれる、結合部をすり合わせるような密着度の高い正常位も有効です。ピストン運動よりも、クリトリスへの圧迫と結合部の密着を重視する動きで、女性が快感を得やすいと言われています。

女性自身が深さとリズムを調整できる「騎乗位」

女性が上になる騎乗位は、挿入の深さや角度、リズムを自分でコントロールできるため、自分が気持ちいいポイントを探りやすい体位です。

パートナーに動いてもらう受け身の状態ではなく、自分で腰を動かしてクリトリスを彼の恥骨に押し当てたり、Gスポットに当たる角度を探したりすることができます。視覚的にも興奮しやすく、主体的に楽しむことで感度が上がりやすいメリットがあります。

Gスポットを刺激しやすい「後背位」とその注意点

後ろから挿入する後背位は、ペニスが深く入りやすく、膣の前壁にあるGスポットを刺激しやすい体位として知られています。

ただし、奥まで入りすぎることで子宮口を突いてしまい、痛みを感じる場合もあります。その場合は、上半身をベッドに伏せるように低くしたり、パートナーに深さを調整してもらったりして、痛みのない「気持ちいい深さ」を見つけることが大切です。

コミュニケーションを変える:パートナーへの伝え方

演技をやめて「ここが気持ちいい」を具体的に伝える

勇気がいりますが、まずは「演技」をやめることがスタート地点です。そして、何が気持ちよくて、何が痛いのかをパートナーに伝えましょう。

「もっとゆっくりして」「そこは痛い」といった否定的な言葉よりも、「もっと優しく触ってくれると嬉しい」「ここを触られると気持ちいい」と、自分の快感をガイドするように伝えると、パートナーも受け入れやすくなります。

批判ではなく「リクエスト」として提案する会話術

セックスの不満を伝える時は、パートナーの人格や技術を否定しないように注意が必要です。「あなたは下手」と言うのではなく、「私たちはもっと良くなれる」「こういうことを試してみたい」という、二人の関係を良くするための「リクエスト」として提案しましょう。

「最近、少し濡れにくいからローションを使ってみたい」「今日は前戯を長くしてほしい」など、具体的な要望を伝えることで、パートナーもどうすればいいかが明確になり、協力してくれやすくなります。

男性パートナーができることは?彼氏・夫へのアドバイス

もし、この記事をパートナーの男性が読んでいる場合、あるいは女性から男性へアドバイスしたい場合のために、男性側ができるサポートについて触れておきます。女性が「感じない」と悩んでいる時、男性の協力は不可欠です。

ピストン運動よりも「愛撫」と「雰囲気」を最優先にする

多くの男性は挿入後のピストン運動を重視しがちですが、女性の快感のピークや高まり方は男性とは異なります。挿入に至るまでの「雰囲気作り」や「丁寧な愛撫」にこそ、時間と労力を割いてください。女性が十分に濡れ、目がとろんとするなどの興奮サインが出るまでは、挿入を急がない余裕を持つことが、結果としてパートナーを満足させることにつながります。

「イカせよう」と必死になりすぎない余裕を持つ

「俺がイカせてやる」と必死になりすぎると、そのプレッシャーが女性に伝わり、逆に女性を萎縮させてしまいます。「イカなければならない」というゴールを設定するのではなく、「二人の触れ合いを楽しむ」というプロセスを重視してください。男性側のリラックスした余裕が、女性の安心感と感度を引き出します。

アフターケア(後戯)で安心感と信頼関係を深める

行為が終わった後、すぐに背を向けて寝てしまったりスマホを見たりしていませんか? 女性はセックス後の余韻(後戯)で愛されているかを確認します。ハグをしたり、キスをしたり、感謝の言葉を伝えたりすることで、女性の心は満たされます。この精神的な充足感が、次回のセックスへの期待感やリラックス効果を生み、良い循環を作ります。

もしかして病気?医療機関を受診すべき症状とタイミング

セルフケアや工夫を試しても改善が見られない場合、あるいは強い痛みを伴う場合は、背景に疾患が隠れている可能性があります。我慢せず、専門医に相談することも重要な選択肢です。

性交痛が激しい場合に疑われる子宮内膜症や炎症

挿入時に激痛が走る、奥を突かれると痛いといった症状が続く場合、子宮内膜症、子宮筋腫、膣炎、性感染症などの疾患が原因である可能性があります。これらは放置すると不妊の原因にもなり得るため、早めに婦人科を受診し、検査を受けることをおすすめします。痛みの原因が治療されれば、自然とセックスも楽しめるようになります。

抗うつ剤やピルなど服用薬の副作用による性欲減退

現在服用している薬の影響で、性欲減退や感度の低下、濡れにくさが起きている場合があります。特にSSRI(抗うつ薬)や一部の低用量ピルなどは、副作用として性機能に影響を与えることが報告されています。心当たりがある場合は、主治医に相談し、薬の変更や用量の調整が可能か確認してみてください。

セックスカウンセリングや専門外来の活用

身体的な異常がないにもかかわらず、強い苦痛や嫌悪感がある場合は、心因性の要因が強いかもしれません。最近では、性機能障害(FSD)を専門に扱う「女性外来」や、カップルで受けられる「セックスカウンセリング」を行っている医療機関も増えています。プロのカウンセラーや医師に相談することで、絡まった糸が解けるように解決策が見つかることもあります。

セックスを感じない悩みに関するFAQ(よくある質問)

最後に、セックスで感じないことに悩む読者から頻繁に寄せられる質問に対して、Q&A形式でお答えします。

Q. 初めてのセックスで全く感じなかったのですが異常ですか?

A. 全く異常ではありません。
初体験は緊張や不安が強く、痛みを感じることが多いため、快感を得られないのがむしろ普通です。回数を重ね、慣れてリラックスできるようになると、徐々に感覚が変わってくることがほとんどです。

Q. 濡れているのに感じないのはなぜですか?

A. 「濡れる=感じる」とは限りません。
生理的な反応として分泌液が出ることはありますが、神経が興奮していなければ快感にはつながりません。また、濡れすぎて摩擦が減っている可能性もあります。精神的に興奮できているか、適切な刺激があるかを見直してみましょう。

Q. コンドームをつけると彼氏も私も感じにくくなります。対策は?

A. 薄型の製品や潤滑剤を試してみましょう。
ゴムの厚みで体温や感触が伝わりにくくなることがあります。0.01mmなどの極薄タイプに変える、コンドームの上から潤滑ゼリーを足して密着度を上げるなどの工夫で改善されることが多いです。

Q. マグロ(無反応)だと思われないための最低限の反応は?

A. 吐息やハグだけでも十分伝わります。
無理に声を出す必要はありません。気持ちいいと感じた時に少し吐息を漏らす、パートナーの背中に手を回して抱きしめる、目を見つめるだけでも反応は伝わります。小さな反応を返すことから始めてみてください。

Q. バイブなどのグッズを使いすぎると感度が落ちますか?

A. 一時的に鈍くなることはありますが、永続的ではありません。
強力な振動刺激に慣れすぎると、生身の刺激が物足りなく感じることがあります(いわゆる遅漏や不感の状態)。しかし、使用を控えれば感覚は元に戻ります。グッズはスパイスとして適度に取り入れるのがおすすめです。

まとめ:焦らず自分のペースで「セックスを感じない」を解消しよう

セックスを感じないことには、必ず何らかの理由があります。それはあなたの身体的な欠陥ではなく、ホルモンバランス、筋肉の衰え、精神的なブロック、あるいは単なる経験不足やパートナーとのすれ違いかもしれません。

重要なのは、「自分はダメだ」と責めないことです。骨盤底筋を鍛える、ローションを使う、自分の体を知る、パートナーと話し合うなど、できることから一つずつ試してみてください。身体の感覚は、年齢に関係なく開発し、育てていくことができます。
焦らず、自分のペースで、心と体が本当に心地よいと感じられるセックスを探求していきましょう。