- マンションの小規模・中規模・大規模修繕工事の実施時期の最適な年数は12年・15年・18年のどの周期?
お住まいのマンションの大規模修繕は何年を目安に行っていますか。
大規模修繕は高額な費用がかかるため、少しでも費用を抑えたいと考える方も多いのではないでしょうか。
現在多くのマンションでは12年前後で大規模修繕を行うのが一般的です。
しかし、近年では大規模修繕の周期を延ばし、長期的な修繕費用を削減する動きがみられます。
より耐久性や防水性の高い工法・資材等を使用することで、お住まいのマンションの大規模修繕の周期を15年・18年と延ばすことが出来るかもしれません。
長期的な管理コストの大幅削減が期待できますので、今後の長期計画の見直しの際には検討してみてはいかがでしょうか。
こちらの記事では、大規模修繕の周期の目安・周期を延ばすために必要なことなどをお伝えしています。
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目次
大規模修繕工事とは?必要性は?
月日の経過とともに建物が少しづつ劣化していくことは避けられません。
経年劣化により、外壁のひび割れ・防水効果の低下・鉄部の錆びなどが発生します。
そのような劣化によるダメージを防ぐために、計画的に行われるのが大規模修繕です。
劣化を放置すれば、雨漏り・設備故障など利用者にとって不具合が発生する可能性が高くなり、結果的に建物の資産価値が大きく低下します。
外壁タイル落下等の事故が発生することも考えられますので、安全のためにも必ず行わなければなりません。
主に外壁・屋上・階段・エントランス等の共用部分に対して行う工事で、分譲マンションの場合には居住者がその費用を毎月の修繕積立金として負担するのが一般的です。
1回の修繕費用は数千万円から1億円を超えることも珍しくありません。
一戸あたりの負担も100万円前後で、足場を組み立てて行われる大規模な改修・修繕工事となります。
工事内容は
- 仮設工事
- 下地補修工事
- タイル補修
- シーリング補修工事
- 外壁塗装
- 鉄部塗装
- 防水工事
などが中心となります。
2回目3回目の大規模修繕工事では、給排水管・エレベーター・玄関ドア・サッシ・エントランス・郵便受けなど、より広い範囲での修繕工事が行われます。
またより高性能な設備に交換したり、新たな設備を導入したりするなど、時代や社会の変化にあわせた改修工事が行われることも少なくありません。
マンション大規模修繕工事の周期目安
大規模修繕の周期について、明確なルールや決まりはありません。
そのためいつ大規模修繕を行うかは建物の所有者に一任されています。
ビルや賃貸アパートなどの場合には、ビルオーナーの一存で実施時期が決定されます。
分譲マンションの場合には、区画所有者で作られる管理組合が中心となり大規模修繕の時期を決定することとなります。
建物の劣化状況
大規模修繕の時期を決定するうえで、最も大切なことは建物の劣化状況を確認することです。
一般的な目安はありますが、建物の状況はそれぞれ異なるため、大規模修繕を行う適切な時期もみな同じではありません。
例えば、海に近くて常に海風を浴びているマンションと、そうでないマンションでは劣化具合が大きく変わってくることは想像に難くありません。
必ず建物劣化調査を行い、劣化状況を確認した上で大規模修繕の時期について慎重に検討しましょう。
分譲マンションの大規模修繕は12年周期が一般的
大規模修繕の周期について調べていると12年という数字を目にすることが多いと思います。
決まったルールや決まりがないのに12年という周期が一般的となっているのには、理由があります。
- 国土交通省の長期修繕計画作成ガイドライン
- 塗料や防水材などが劣化するタイミング
- 全面打診調査の実施時期
国土交通省の長期修繕計画作成ガイドライン
一般的に大規模修繕は、「長期修繕計画」に沿って行われます。
長期修繕計画には、劣化予測・修繕のタイミング・どの程度の修繕を行うかなど、事細かに記載されています。
長期修繕計画の作成を助けるものとして、国土交通省が発表しているのが「長期修繕計画作成のガイドライン」です。
これには長期計画作成の際の目安となる数字等も記載されており、周期が12年と記されています。
令和3年に12年〜15年という幅を持たせた数字に改訂されていますが、多くのマンションがこれに倣い、12年周期で新築時の長期修繕計画を作成しています。
塗料や防水材などが劣化するタイミング
マンションに使用される塗料や防水材などの建築資材は、非常に高い性能を持っていますが、10年を過ぎてくると徐々に劣化してくることは否めません。
近年では耐用年数が15年20年といった、耐用年数の長さを売りにした塗料や工法も登場していますが、多くの資材メーカーでは保証期間を10年程度に設定している場合が多く、それにあわせて大規模修繕を行うことが検討されます。
結果として12年前後で大規模修繕を行うマンションが多くなっています。
全面打診調査の実施時期
マンションや学校・病院など不特定多数の人が居住・出入りする建物は建築基準法により、定期的な点検・報告が義務付けられています。
2008年に行われた改訂により、歩行者等に危害が加わる可能性がある外壁については全面打診調査の実施が義務付けられました。
新築または改修から10年を超えている場合には、3年以内に全面打診調査を行わなければなりません。
全面打診調査とはタイルをハンマーなどで叩き、壁面との間に浮きがないかを調べる調査のことです。
低層建築物の場合には脚立等を利用して調査ができますが、高層建築物の場合にはゴンドラや高所作業車の利用・仮設足場の設置などの必要があり、調査費用が高額になる場合が少なくありません。
「全面打診調査で費用がかかるのであれば、そのタイミングで大規模修繕も行ってしまおう」という考え方が一般的となっています。
そのため築13年を迎える前の12年というタイミングで大規模修繕が行われています。
大規模修繕の周期 15年・18年周期への延伸は可能??
近年大規模修繕の時期を15年・18年で考えた長期修繕計画を作成する動きがみられます。
技術の発展により、高性能な資材や塗料が開発され、耐久年数が高くなったことが大きく影響しています。
周期を延伸するメリット
周期を延ばす最大のメリットは、大規模修繕の回数を減らしコスト削減を実現できることです。
12年の周期を15年に延伸できた場合どうなるでしょうか。
60年で考えると、12年周期では5回の大規模修繕が必要ですが、15年周期で行った場合には4回で済みます。
1回の修繕工事の費用が高額となる大規模修繕において、1回の修繕工事を減らすことは大幅なコスト削減に繋がります。
ただし闇雲に周期をのばしてしまうのは得策ではありません。
建物の劣化がすすみ、後々高額な修繕費用が発生したり、マンション価値が下がってしまったりする可能性が高くなるからです。
周期を延ばすためには適切な工法で行う必要がありますので、専門家の意見も取り入れ慎重に検討しなければなりません。
18年周期大規模修繕の現状
多くのマンションがいまだに12年周期での大規模修繕が計画されている中で、18年周期という考えが浸透してきたのは、大手不動産管理会社の動きが関係していると考えられます。
現在、野村不動産パートナーズと東急コミュニティーが18年に1回の修繕で済むサービスを提供しており、この2社から発売されるほとんどの新築マンションが、18年周期で大規模修繕を行うことを前提に販売されています。
より高性能な塗料や資材を使用し、仕様や工法も工夫することで、劣化スピードを抑え大規模修繕の周期を長くすることが可能となりました。
技術的には以前から可能でしたが、大手企業が始めたことをきっかけに12年という常識が変わり始めています。
これらの技術は新築の建物だけではなく、既存の建物にも利用出来ると言われており、長期修繕計画の見直しの際に周期の延伸を検討するマンションが増加しています。
10年アフターサービスを有効に利用する
新築後引き渡されたマンションは2年・10年で無料の検査を受けることができ、不具合が見つかった場合には無料で修繕してもらえることがほとんどです。
築10年を前に建物劣化診断を行うことで、基礎部分に関する不具合はすべて修繕してもらいましょう。
その結果をみた上で12年で大規模修繕を行うべきか、15年でいいのかなどを検討することが可能です。
この保証をうまく利用できるかどうかで1回目の修繕のタイミングが大きく変わる可能性があります。
大規模修繕の周期を延ばすと何が変わるのか
大規模修繕の周期が12年から15年・18年となることでどんな変化があるのでしょうか。
一番大きなメリットは、先述した通り大規模修繕の回数が減ることです。
多額の費用が発生する大規模修繕において、回数が1回減れば大きなコストダウンとなります。
また大規模修繕中は生活が制限されて不便に感じる方も少なくないため、生活面においても大きなメリットとなるでしょう。
一方で、中間メンテナンスが必要な箇所がでてくることを忘れてはいけません。
修繕と修繕の間にも、軽微なメンテナンスや検査はこまめに行うことが大切です。
また長期周期を実現するためには、適切な工法・材料を使用し耐久性を高める必要があり、1回の修繕費用は高くなることが考えられます。
修繕費用に充てられる予算や住民の意見などとあわせて検討が必要です。
大規模修繕工事の周期を伸長させるために必要なこと
コスト削減という大きなメリットのある長期周期ですが、ただ単に周期を延ばすのは大変危険です。
周期を延ばすためには、
- より高性能な資材や塗料を使用する
- 適した工法で耐久性を高める
- 小さな修繕はこまめに行う
- 不具合が見つかった場合には、予定より早くても大規模修繕を行う
など、大規模修繕の質を向上させることに加え、日頃から丁寧な管理が求められます。
大規模修繕の周期についてまとめ
大規模修繕の周期について解説してきました。
まとめると、
- 大規模修繕の周期は12年が一般的
- 技術の発展によりより耐久年数の長い材料が開発されている
- 近年では15年・18年に一度の周期とする動きがみられる
- 1回目の大規模修繕は、10年保証をうまく利用することでより大規模修繕を先延ばしにできる可能性がある
- 大規模修繕の周期を決定するためには、劣化調査を丁寧に行い、建物の劣化状況・大規模修繕の緊急性を検討することが大切
大規模修繕は技術の発展により、12年周期という常識が変化しつつあります。
コスト削減の意味では、大規模修繕の長周期化は非常に魅力的です。
建物の劣化状況を把握し、適切なタイミングで大規模修繕を行うことが最も大切ですが、
長期修繕計画を見直す際に、長周期化も検討してみてはいかがでしょうか。
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